YMO『サーヴィス』

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YMOが解散するということを知ったのは果たしてどのタイミングだったか?恐らくは雑誌か何かで兆しを感じていて、正式にはラジオか何かで知ったんだと思いますが、もう彼方の記憶なので覚えていません。普通にショックでしたが、どこかに諦めもあったので、何となく受け入れていた。それは歌謡路線で感じた終末感から来ていたのだと思います。

 

最終アルバムの本作は驚いたことに再度ギャグ集団とのコラボレーションでした。こんなことをキャリアの中で二度もやるバンドなんて、後にも先にもYMOだけですよね。YMOの初期構想にはメンバーに横尾忠則の名前が挙がっていましたが、当初のコンセプトにあった様々な才能を持ったメンバーが作品の度に入れ替わり立ち替わり参加していくような形態。これが目指されていたんだとすれば、こうした他分野との協業も自然の成り行きだったのかもしれません。

 

SETのギャグはスネークマンショーと比べてベタなもので、あまりのめりこめませんでしたが、その対比で楽曲のクールさが目立った。特にこのアルバムで最高のタイミングで最高の音楽が奏でられているのは「Shadows on the Groud」だと思います。この曲は本当に美しい。

 

またオープニングの「Limbo」も爽やかでカッコいいし、エンディングの「Perspective」も最高です。自宅を設計する際に建築家に提示したコンセプトワードは「ひとつだけ」だったんですが、もう一つの候補は「Perspective」でした。家族の温かみが感じられる上に上品でカッコいいので、向いているかと思ったんですね。

 

このアルバムに漂うAOR的な雰囲気は、バンドの幕引きにおける一種の余裕と安堵感を醸し出していて、非常に美しい。そして長い時を経ても色褪せない魅力があります。意外とその後も何度も聴き返すことが多いアルバムです。