小沢健二が戻ってきました。シングルは何枚か切っていましたが、アルバムまで出すとは驚きです。もう二度とないと思っていた音楽的体験が、90年代当時を匂わせる雰囲気で時代を切り取って再来した。それはとても嬉しいことです。
ブレイク当時から痛々しかったんですが、今回そのイタさが復活していて、結構変な曲も多い。しかしながら、これはキャラクタービジネスではなく音楽なので、そこで奏でられる躍動感のようなもの、これが大事です。今回それが復活している。乾いたビートとストリングス、ハンドクラップ、コーラスといった要素が渾然一体となってカラッと迫ってくる。しかし歌詞はちょっと理屈っぽい。
全盛期から四半世紀も経って、瑞々しさを持ち続けるのは難しいことです。ひとつには客観的視点というものがありそうですね。今、小沢健二はニューヨークに住んでいて東京にはいない。それで東京の姿が描けるのか。見つめているのは恐らく当時とのギャップでしょう。それが詩になる。
しかし、90年代もそうだったんじゃないでしょうか。観察者はそこにいながら同化はしない。いながらにして周囲をずっと見ている。だからこそのクリエイターなんじゃないかと根本的に思ったりもします。