サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』

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16年にリリースされた永井博のイラストが印象的なこの作品は当時からずっと気になっていたアルバムでした。あえてシティ・ポップに挑んだ、といったような趣で、サニーデイ・サービスのメロウな面が強調されているような雰囲気があった。そして実際にそうでした。

 

「セツナ」や「苺畑でつかまえて」といった楽曲はMVを当時から見かけていたので聴き覚えはありました。それだけではなく、収録曲はどれも美しくて、作品としての凝縮度が濃いなあ、と感じます。しかし「あえて」やっているところも見えてきて、聴いていて心地良いのにどこか重苦しくなることがある。ポップなのに闇が深い。

 

聴いている印象は一時解散する前の『LOVE ALBUM』に近いなあ、と思っていましたが、共通するのはバンドの作品でありながら曽我部恵一の単独作品に実質的に近いということ。本作も難産の上に生まれたそうですし、制作中にメンバーの体調不良による離脱といった問題もあった。

 

そうした状況の中で「あえて」軽く聴ける作品を作った。こうした一回りした上での明るさを表現したという意味ではムーンライダーズの『青空百景』にもスタンスが近いなあ、と思います。