「この次はモアベターよ」と言って終わる細野晴臣の78年リリース作品。その意味は今となってはYMOのことを指していたと分かりますが、位置づけ的にはトロピカル3部作のラストということになっています。でもこれはプレYMOですね。
砂原良徳のリマスターで再発されたので今回手にとったんですが、先日聴いた『テクノドン』が余りにも攻めている音だったので、果たしてこちらはどうかな、と恐る恐る聴きました。
結果的にはイメージ通りのストイックな音で安心したんですが、じゃあ『テクノドン』の音は何だったのか。監修がゴウ・ホトダなので、外部の意志が若干入った結果なのか、真相は定かではありませんが、基本的に砂原良徳のリマスターは余計なものを省いていくものだと思っているので、こちらの音の方がしっくり来ます。
「ファム・ファタール」で初めて高橋幸宏と坂本龍一が揃って録音されて、その後コタツでYMO結成が打診され、本作とYMOの1stは同じ78年にリリースされる。78年には高橋幸宏の『サラヴァ』と坂本龍一の『千のナイフ』もリリースされていますので、歴史的には重要な年となります。
この『はらいそ』で奏でられる異界の音は、最初聴いた時には宗教的にも感じましたが、今となっては牧歌的にも聴こえます。とてもメロディがいい楽曲が多いし、音はアルファ・レコードの、アメリカの音がする。もうここでは前作の『泰安洋行』の混沌はありません。だから中毒性は低くなるんですが、ちょっと意味合いが違う。もう次のフェーズに移行していると考えた方が良いと思います。