トッド・ラングレンズ・ユートピア『Benefit For Moogy Klingman』disc 1

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ここ最近家の中で話しているのは、生活スタイルが昭和の頃に戻ってきている、ということです。かつて生活環境はそんなに便利ではなかったし、人もそんなにいなかった。いつからかそれが過剰に多くなって、過剰に便利になって。この変化は震災後にも一時期感じたことですが、同じようなことが今回は徹底的に起きているような気がします。

 

その震災の年、2011年に開かれた今は亡きユートピア初期メンバー、ムーギー・クリングマンの闘病資金のためのコンサートを収録したライブ盤が今になって発売されました。開催当初もYouTubeに映像が上がっていたので知ってはいましたが、亡くなった後のコンサートも含めて音源と映像でフル収録して発売するというこの徹底したサービスぶりはどうだ。

 

1枚目は闘病資金のためのニューヨークでの2011年1月29日のコンサートから。初期ユートピアがフルメンバーで集結して、名曲「Lady Face」から『Something / Anything』に収録されているムーギー作品「Dust In The Wind」までツボをついた選曲で楽しませてくれます。いい曲だなあ。

 

収録曲数は9曲ですが、後半の「Utopia Theme」とか「The Ikon」とか、プログレ期のユートピアの楽曲は尺が長いので、収録時間は前半だけでも68分とフルボリュームです。とても2011年とは思えない演奏が繰り広げられますが、この現役感と器楽としての魅力度、本当に惜しい人を亡くしてしまって、もう二度とこういったリユニオンはないのかな、と寂しい気分にもなりますが、この記録自体が素晴らしい。何故今発売するのかは意図が不明ですが、世の中にパッケージ作品として記録が残せたのは単純に喜ばしいことです。