ビートルズ『Anthology 3』disc 1

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アンソロジーの第3集は後期音源です。1枚目はホワイト・アルバムのデモやアウトテイクですが、これは50周年記念ボックスが出た際に会社の人が話していたことを思い出しました。

 

曰く、「一回聴いて二度と聴かないかもしれないから迷ってるんだよ」と仰って、結局買ってないんじゃないかと思いますが、デモ集というのはそういうもんで、やっぱり聴くなら正式盤の方に手が伸びてしまう。マニアでもやっぱりそうなんじゃないかなあ。この『アンソロジー』も結局そんなに皆聴かなかったから中古屋にも結構な数の在庫があって価格も安いのかな、などと考えてしまいます。

 

とはいえ、自分はホワイト・アルバムは大好きなので、ここでの音源も興味深く聴けました。ジョージ・ハリスンの家に集まって録音した通称イーシャー・デモといわれる音源も初めて聴きましたが、もうこの時点で『アビー・ロード』の楽曲があったなんて。

 

超メジャーなアーティストは偶像化されてしまうので一瞬その正式な作品ごとに時間が経過しているかのように聴く側は錯覚してしまいますが、アーティストも当たり前ながら一人の人間なので、その人生は時間と共に継続している。作品ごとに存在が分かれているわけではありません。ゆっくり過ぎていってその時間は繋がっているんですね。だから作品の時期が前後していても当たり前で、後のソロ作品のデモがここで聴けても当然なわけです。

 

ビートルズが仲が良かったのは「ヘイ・ジュード」までで、そういった意味ではこのディスクの頃までが4人のバンドだった。既にホワイト・アルバムでは個人作業化してはいますが、まだバンドとしての意思疎通があって、そのいい雰囲気が「ヘイ・ジュード」のテレビ出演での映像から伝わってきました。

 

次のディスクが最後ですが、ここではもうバンドは終わっている。後味の悪い解散劇を繰り広げていたという最後の頃の作品ですが、それでも音楽はいいんだな。感情的なすれ違いも一旦音楽を奏でると一瞬で吹っ飛んでしまう。この辺りはスポーツなんかでも一緒かもしれません。フィジカルに動くと雑念が消えるんですね。