フェネスサカモト『flumina』disc 1

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2011年の震災の時に自分が何をしていたかというと、関西の得意先の拠点でその瞬間を目撃していて、ほとんど貧乏ゆすりくらいにしか揺れなかった地震とテレビを通して見た映像の衝撃とのギャップや家族の安否確認といった記憶が蘇ってきます。

 

この作品は2011年の8月にリリースされていますが、収録曲のタイトルが「0318」から始まって全て記号化されているので、総体として浴びる音から震災後の世界を想像する内容になっています。

 

この音楽を最初に聴いたのがその年のワールドハピネスで、実際に夢の島で体験した音は暑い中に静謐な音楽をそっと置いていくようなものでした。とても印象に残りましたが、実際に作品を聴いてみると意外な程エモーショナルで、伝わってくる音にはやはり悲しみや感情が含まれている。従って印象論では語れないものがあります。

 

震災後に音楽が作れなくなってしまったアーティストは沢山いましたが、坂本龍一の場合はすぐに反応した。そして音を紡いでいった。このタフな表現者は非常時にこそその真価を発揮する。本作もその好例のような気がします。