細野晴臣の2019年のLAでのライブ盤がリリースされました。ここ最近の活動は映像にはなっていましたが、音源としてリリースされるのは初めてなので、まずはめでたい。どうしても映像はリピート性に乏しいので、やはりここは音で欲しかった。
ご本人も語っておられる通り、日本人がブギウギを本場アメリカでカバー演奏するというのは奇異に映らないか、という不安は公演で一掃され、違和感なく成功に終わった。ここにはいくつか意味があると思います。
やはり昨今のシティポップの世界的なブームはYouTubeなどで気軽に日本の楽曲が世界中で再生されたことが大きくて、そこから大貫妙子の再評価などが起こっている。細野晴臣の音楽も、アンビエント期まで含めて世界中で聴かれるようになっています。それが本公演の成功にも寄与しているんだと思います。マック・デマルコとの共演もそれを証明している。
コロナ禍以降はさらにこうした気軽な国際化は実現されていて、最近では英会話からビデオ会議、果ては市場調査までがPCやスマホを介して楽々と行われている。この辺のハードルの越えっぷりは痛快ですね。自宅で手軽に国境と文化を越えるのが日常化しています。
その上で楽曲の勢い、艶っぽさからいくと「薔薇と野獣」が突出していて、直近のセルフカバー作『HOCHONO HOUSE』から鮮度をキープして演奏されているので、とても肉感的に響きます。
ラストの「Absolute Ego Dance」で高橋幸宏と坂本龍一がゲスト参加したのはロンドン公演でしたので残念ながらここでの音源とは異なりますが、それでもこの時期の演奏がパッケージ化されて形として残ったのは大きいと思っています。