スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス『Stan Getz & Bill Evans』

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64年に録音されて10年後にリリースされた作品。なるほどこれは・・。

 

先日聴いたキャノンボール・アダレイとの共演と比較すると、各々の自己主張が先に立ってしまっていて調和がない。それでも全体的に各々の演奏が競うように際立っていけばいいんですが、そういった感覚ではなくて拡散していく感じがあります。

 

しかもスタン・ゲッツビル・エヴァンスの演奏だけではなくベースやドラムの演奏も主張してしまっていて、益々調和を乱しています。ビル・エヴァンスのピアノトリオはそうはいっても各々の個性を尊重する形態な訳ですが、相対的に各々の演奏を見ながら根底では通じ合っているからこそ発露する多層性がありました。ここにはそうした核は見当たらない。

 

ということで、ご本人達も内容が気に入らずにお蔵入りしていた作品とのことですが、聴いていて不快かというと勿論そんなことはなくて、演奏はカッコいいです。ただ、素材の良さが混ざって化学変化を起こすまで至っていない、という印象でした。