99年リリースの荘厳な作品。7年ぶりに出る新作、ということで発売当時は会社の帰りに購入してCDウォークマンで山手線の中で最初に聴きました。それで出てきたのが水滴の音と弦楽器のピチカート。始まった音楽はオーケストラ、ということでこれは驚きましたねえ。XTCがこんなことをするのか、という意外感と、そうは言っても複雑な音の洪水。なんといっても冒頭の「River of Orchids」のインパクトは強烈です。
音の配置で徐々に形が形成されていくスタイルは後のコーネリアスの音楽にも若干の類似性が見出せますが、やはりアンディ・パートリッジは紡ぎ出す各々のフレーズ、それはリフであってもボーカルであっても、ひとつひとつが非常にポップなので、それらが組み合わさって交互に登場して全体を作り上げていく様が、とてもマジカルになります。
このアルバムはその「River of Orchids」とポップな「Greenman」、そして「Harvest Festival」、この3曲で決まりでしょう。後は全体の雰囲気を楽しめばいい。
元々次作の『Wasp Star』との2枚組で構想されていて、こちらがアコースティックサイド、もう一方がエレクトリックサイドとなる予定だったものが分割されて発売された、ということで「まだ次があるんだ」という期待感を残してのリリースでしたので、楽しみがこの時点ではまだ残っていた。でもXTCはこの2枚で終了してしまいました。
このオーケストラによるアプローチに反発して録音中にデイヴ・グレゴリーが脱退。ついにXTCはアンディ・パートリッジとコリン・ムールディングの二人になってしまいました。そして、今はコリンもいない。アンディはやっぱり面倒くさい人なんだろうし、バンドという形態で音楽を続けるのは難しかったんだと思います。一人で続けるユニットもあるんだから、単独でXTCを名乗ればいいんですが、それは何故かやりません。何か理由があるんでしょう。