プリンス『Sign O' The Times (Super Deluxe Edition) 』disc 6

f:id:tyunne:20211213050116j:plain

未発表曲集のラスト。合計で45曲の未発表曲が収録されていることになります。

 

20時間仕事して4時間寝るという生活で、ほとんど寝ずにずっと録音していた人ですので、曲がどんどんできる。しかも完璧主義者ではなくて素早く作業していくことを優先していた、なんていう話を聞くと、非常にワーカホリックで面白い人だったんだなあ、と感心してしまいます。オンとオフの境目がない、という点では今のリモート環境に近いような感じがしますね。

 

冒頭の「Emotional Bump」は何とジョニ・ミッチェルのために書いた曲。実際は採用されなかったそうですが、プリンスはジョニ・ミッチェルのファンなんですよね。今度聴く予定のジョニ・ミッチェルのアーカイヴ第2集ではジミ・ヘンドリックスが録音したライブ音源があるようですが、ジョニ・ミッチェルという人は意外な人が敬意を表する不思議なミュージシャンですね。しかしこの曲をジョニ・ミッチェルが歌うとは思えないなあ。

 

ボニー・レイットのために書いた曲、なんていうのも入っていて、これも実現はしなかったんですが、沢山の楽曲を量産する中にそうしたエピソードが紛れ込んでいるというのが非常に楽しい。パフォーマーでもあるけれども基本はソングライターだったんでしょう。

 

バンド演奏の楽曲が多いので落ち着いて聴けるというか、宅録単独作業の本編というのがそもそも異常な作品だった、と考える方が良さそうな気がしてきました。バンドを失って個に入り込む時期の作品集、という趣が強いのかもしれません。しかし、この後に録音してお蔵入りにした『Black Album』もとても地味なアルバムだったので、何となくこの時期は陰の時期だった。それが未発表音源ではプロセスの開示になるので突き詰めない、ということか。勿論曲にもよりますが。