細野晴臣『Music for Films 2020-2021』

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今回配信に手を伸ばしたきっかけがこの作品です。配信とアナログでのみのリリースでCDの発売が見送られましたので、ちょっと考えて配信の方へ舵を切りました。結果的に様々なボックスセットも聴けて正解だったんですが、やはりメディアの選択はコンテンツから始まるということを改めて実感しました。CDの時はXTCの再発がきっかけだったもんなあ。

 

冒頭は先日映画も鑑賞した『SAYONARA AMERICA』のテーマ曲「Sayonara America, Sayonara Nippon」。はっぴいえんどのセルフカバーですね。続いてひとつ前の映画の主題曲「No Smoking」が来ます。冒頭はこんな感じで快調に飛ばしていきます。

 

後半は比較的静かな曲が多くて、聴いているとノマド・レーベルの頃を思い出します。思えば『銀河鉄道の夜』のサントラもこんな感じでしたし、『コインシデンタル・ミュージック』の頃もこんな感じでした。自動筆記で楽曲を制作していた時期ですね。映画音楽の制作は似たような面があるのかもしれません。映画がありCMがある、ということはクライアントのオーダーがあるということなので、必然的にテイストが似てきてしまうのか。ご自分のドキュメンタリーは別でしょうが。

 

ここから何を読み取るか。読み取るべきなのかどうかも分かりませんが、とりあえず言えるのは音が静かであり、かつブギウギではない内省的な音が鳴っている比率が高い、ということ。先ほど触れた80年代中盤の環境音楽の時期と、同時に再発されるスウィング・スローにも顕著なアンビエント直後の音の質感、そして現在の音を置きに行くような丁寧で静かな音楽。これは何かひとつの狂騒が終わった後の感覚に近いものがあるような気がします。コロナの時期が続いて少し出口が見えたようでまだ見えない。それは時代が変わったということで、ご本人のモードも変わって来ている。もしかしたらその辺りが共通点なのかもしれませんね。