68年のモントルー・ジャズ・フェスティバルのライブ音源のみ存在していた、ジャック・ディジョネットがドラムで加入していた時期のピアノ・トリオの音源が発掘されている作品です。これともうひとつ『Some Other Time』というスタジオ録音盤が発掘されていますが、こちらはモントルーから1週間後のオランダでのスタジオ・ライブです。
これはやはり凄いですね。録音状態もとてもいいのでエディ・ゴメスの太いベースの音がどんどん前に出てきて聴こえますが、何といってもジャック・ディジョネットのドラムでしょう。ドラム・ソロは「Nerdis」でしか聴けませんが、これは凄かった。
モントルーでのライブで聴こえるジャック・ディジョネットのドラムの音は、まるで水が流れるかのような細かい音で紡ぎ出される独特のソロでしたが、ここでの音はそこに強さが加わっています。端的に音がいいからかもしれませんが、スネアのアタック音が鋭く強くて、まるで能楽での鼓の音のようです。
また、これも音がいいからなのか、音が鳴らない無音の空間が聴き取れることで、逆に細かな音の粒立ちが粗い粒子のようにひとつひとつ際立ってくるように感じました。これは流れるような音ではなく強い音です。
先日聴いた『Montreux Ⅱ』でもそうでしたが、ビル・エヴァンスのこの時期のピアノはとても躍動的です。静かな音というよりこちらもやはり強い音。メンバーにも触発されているのかもしれませんが、演奏全体として迫ってくる迫力があるように思います。この時期の作品もとてもいいですね。