ビル・エヴァンス『Time Remembered』


ビル・エヴァンスの生涯を辿ったドキュメンタリー映画を観ました。こちらもずっと気になっていた作品でしたが、今回の休暇を機に手にすることにした次第。

 

観終わった感想は結構サラッとしたものでした。あまり余韻はない。但し、知っている名前と知っているエピソードが映像付きで次々と出てくる様はやはり素晴らしい。友人や家族の死を目の当たりにして、かつドラッグとも生涯縁が切れなかった。決して幸せな一生ではなかったはずですが、それでも音楽に人生を捧げた。残した音が美しい。

 

ビル・エヴァンスは途中で風貌がガラリと変わるんですが、それが一時期ドラッグを絶った際のことだったというのは初めて知りました。

 

思い切り猫背でピアノを弾く姿が動く画像で観れること自体貴重なことですが、数々の関与者がインタビューでどんどん出てくるのもなかなか熱いものがあります。「ワルツ・フォー・デビィ」のモデルとなった姪のデビィまで出てきます。

 

マイルス・デイヴィスとの『カインド・オブ・ブルー』に関するエピソードもたっぷり出てきて、これで終わってもいいくらい濃密ですが、その後にスコット・ラファロと出会ってピアノ・トリオとして最初のピークを迎える。そして事故でそのスコット・ラファロを失ってしまう。人生の展開が早過ぎますね。

 

その後のキャリアもきっちり押さえつつ、今度はパートナーや家族の死にも直面していく。ドラッグも一度やめたものの、再度手を出して・・という側から見ると悲惨な人生なんですが、それでも音楽が美しいというのはどういうことなのか。

 

インタビューにも登場するジャック・ディジョネットとのエピソードについても時間を割いて欲しかったですし、『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』あたりの話も聞いてみたかった。でもまあそれは贅沢というものでしょう。後は演奏そのものを記録した映像を探してみたいですね。