坂本龍一『Playing the Piano 2022』


坂本龍一の恐らくラストとなるライブが配信されています。全4回の配信の内、今4回目を観ているところですが、久々に静謐な世界観を味わいました。

 

闘病中の身なので人前での演奏は勿論、通して演奏することも体力的には難しい中、懸命かつ優しいタッチで音を届けてくれた。同じ病気を患う方にも大変励みになりますし、体調がとても心配ですが、音楽はまた別の話。決して本調子ではないとはいえ、全くそれを感じさせない綺麗な演奏で、まるで闘病中であることを忘れてしまったかのようです。

 

中盤の「Aqua」あたりから馴染みの曲が出てきて、「東風」まで演奏してくれます。少し全体の中では違和感のあるポップさですが、きっとここはファンサービスなんでしょう。後半の映画音楽3連発、「シェルタリング・スカイ」「ラスト・エンペラー」「戦場のメリー・クリスマス」にはやはりグッと来ますが、あくまで鬼気迫る演奏ではなく、迫力を伴いながらも優しいタッチで演奏されます。

 

映像は終始モノクロ。手のアップが多いですね。演奏終了後は年明け発売予定の新作『12』の先行試聴もありました。

 

穏やかな演奏なので最初は目を瞑って眠ってしまいそうになりました。それくらい気持ちのいい音が続いています。低音が多いアレンジですね。曲間に楽譜を取り替えて足元に置く仕草と音がとても印象的でした。曲によっては微かな笑顔も垣間見える。ラストはごく自然に手を合わせて映像が終わります。