坂本龍一『12』


高橋幸宏は亡くなってしまいましたが、坂本龍一も闘病中。何ということでしょうか。自分達のヒーローが次々と旅立っていってしまいます。

 

坂本龍一は昨年末に配信でライブ映像をアップしてくれましたが、そこでアナウンスされた新作がご本人の誕生日にリリースされた本作となります。こちらも配信で楽しみました。

 

日々の生活や自らの命を音に託すかのような音楽。ひたすらに優しいし、総体として迫ってくる情景はとても静かなものです。昨今の坂本龍一の作品は09年の『Out of Noise』以降は音楽というより「音」を重視した作品に仕上がっていますが、そこにピアノの演奏が加わると、更に「音」が美しくなります。ここでは響きやエコーも語っている。

 

曲のタイトルも録音した日付でしかないので、もはや作品というよりデータに近い。日記に近い。記録に近い。それが今の坂本龍一の音楽であり、寄り添う音はとても穏やかです。自分達の日常もなぜかそこにあるかのような気にさせてくれる、非常に温かい音楽だと思いました。同時に命を音に変換していくという覚悟のようなものも感じます。