40周年記念コンサートの会場で先行販売されていた再発盤2枚組を早速入手しました。20周年記念盤も聴いていたので、アナログも含めると三度目か四度目の入手になります。
84年の発売時に自分は高校生でしたが、ムーンライダーズの作品で初めて手にした作品がこれでした。当時YMOの関連でムーンライダーズもニュー・ウェーブの一角を占めていたので、雑誌で紹介されていたのが手にしたきっかけだったと思います。
想像に反して聴きやすいアルバムだったので、逆に驚いた記憶があります。ビートニクスの1stから連想していた音はいい意味で裏切られて、結構肉感的な音に聴こえました。今から考えれば、この『アマチュア・アカデミー』という作品がムーンライダーズの長い歴史の中で唯一外部プロデューサーを起用した作品だったため、分かりやすく抜けの良い音が鳴っていたのがその理由だったわけですが、しかしこれには意味があると思います。
たまたま自分の場合はこれが入口でしたが、この分かりやすさ、聴きやすさ、抜けの良さ、というのは万人に開かれていたものだと思うんですね。当時学校の友人の何人かにこのアルバムを貸して聴いてもらった際に、結構評価が高かった記憶があるのが「B TO F」という曲でした。このアルバムの中でもとりわけ聴きやすい楽曲がムーンライダーズを聴く入口になっている。これが別のアルバムだったらそうはいかないと思うんですね。
入口、というのは他にも意味があって、ここからムーンライダーズの魔境に入っていく事になるヒントが隠されている。自分の場合は、それは歌詞にありました。音楽を聴く場合、歌詞に着目することは自分の場合滅多にないんですが、このアルバムの楽曲はキレのいいフレーズが随所に登場していました。
「Y.B.J.」の「直立」「吊して」といったフレーズは水泳部の部室で麻雀をしながらよく歌ったものです。「何それ?」と皆に聞かれましたが、それが大事。他にも「彼女の頬に灰がつもり続く」、「G.o.a.P.」の「この部屋は壁一枚で地獄」、「NO.OH」での「銀行はケチだ」、「B.B.L.B.」での「ハッピネスは辞書にものってるとおりで」といったフレーズが非常に立っていて、このバンドが只者ではない感じがジワジワと伝わってくる感じがありました。バックに控えているのは何かとてつもなく知的で不気味なものなのではないか。そんなことを想像させる入口でもあった。
「BLDG」は10ccみたいだなあ、「B.B.L.B.」のハッピネスのくだりはビートルズの「Happiness is a Warm Gun」のようだ、といった感想は後になってから思うもので、最初に聴いた際の感覚は、歌詞のフレーズの奇妙な印象と、男性コーラスの魅力が耳を捕らえた。その後は長く深い探索が続いていくわけです。そこから40年。
今回もボーナストラックに収録されているシングルB面曲の「GYM」という楽曲が実はこの時期のムーンライダーズの最高傑作だと思っています。間奏のサックスのソロからコーラスに繋がる場面で涙が出そうになりますが、ユーモラスでカッコよくてセンスがいい。ここからムーンライダーズを聴き始めて本当に良かったと、今では感じています。