バッドフィンガーはビートルズのアップル・レーベルに残した『Ass』までだと思っていましたが、今年発売されたCDジャーナルの別冊「and THE BEATLES」のバッドフィンガー特集を観ていて、ワーナー作品の2作『涙の旅路』と、本作『素敵な君』までは聴かないと、と思いを新たにしました。74年のリリース。プロデュースはサディスティック・ミカ・バンドの『黒船』も手がけたクリス・トーマスです。
その雑誌でのクリス・トーマスのインタビューが良かった。本作の録音時にはバッドフィンガーのメンバーは全く曲が書けておらず、クリス・トーマスのアイディアでメドレー曲を作り上げていった話や、ピート・ハム、トム・エヴァンズの訃報に接した時の話など、興味深く読むことができました。その中でも、この『Wish You Were Here』には並々ならぬ思い入れが語られていて、とても微笑ましかった。
実は、当時未発表に終わった『ヘッド・ファースト』という作品があって、2000年に蔵出し再発されているんですが、昨日久々に聴き直してみました。ずっと聴けずにいたんですが、これが予想以上に素晴らしい出来のアルバムで、益々本作への期待が高まりました。
肝心の内容はどうかというと、頑張って作っている感じがしてとても良い作品でした。メロディの美しさは『ヘッド・ファースト』に譲る面があるものの、プロダクションとしての作り込みはしっかりとなされていて、メドレーの2曲なんかも、とても自然に繋げられています。ワーナー期の作品も捨てたもんじゃない。これは前作の『涙の旅路』も聴かないといけませんね。バッドフィンガーの青春時代は74年まで続いていたのか・・。