高野寛の新作がリリースされました。先日自らの半生を振り返った『続く、イエローマジック』という書籍も出ていて、今回のアルバムでは全編打ち込みのサウンドとなっている、ということで、35周年にして原点回帰がなされている作品であるといえそうです。
高野寛の場合、2009年にリリースされた『Rainbow Magic』で一度吹っ切れたようなところがあって、かつての自らのヒット曲「虹の都へ」をセルフカバーしたりもしていました。そこでもある種の原点回帰はなされていたと思います。
今回はそこに更にYMOチルドレンとしてのアイデンティティを堂々と肯定して音に表現した点が新しい観点だと思います。そこに砂原良徳のマスタリングは必須だった。実際に聴こえてくる音は80年代の質感を感じさせて、意識的にくぐもった音像となっています。
更にここへ要素を加えるとすれば、やはり高野寛の持ち味である、生来のメロディアスな音楽、そしてアコギの音が鳴っていると、より一層原点に近づくのではないかと思います。打ち込みが原点だとは思うんですが、聴いている側の高野寛に対するイメージにはメロディとギターが既に要素として不可欠なものとなっている。本作での打ち込みの音がネイキッドなスタート地点だとしたら、メロディとギターの追加は、それに続く物語になっていくと思います。そんなことを期待しながら聴いていました。
その後も聴き続けている中で、「Play 再生」や「STAY STAY STAY」などのような楽曲にはそういった要素が付加されていて、次へのヒントが見えるような気がしてきたところです。