坂本龍一の映画『opus』の音源としてリリースされたCD2枚組が届きました。映像より先に音を楽しむ形となりましたが、そもそも音の方がリピート性は高いので、結果的にこちらの方を今後はよく聴くことになるように思います。
再生してまず驚いたのはノイズが多いこと。晩年の坂本龍一の音源はライブ会場の観客の咳払いや環境音をそのまま活かして録音物にする、ジョン・ケージのような方法論で「音そのもの」を提示する傾向にありましたので、今回のスタジオ録音もヒスノイズやピアノのフィジカルなノイズをそのままパッケージして音源化しています。
全般的にトーンが静かで暗い。「Andata」なんて葬送曲のようで、少し聴いていて切なくなってしまいますが、時を超える音というものに感情は不要。あくまで音として楽しんだ方が良い。そういった意味でご本人の息遣いまで聴こえてくるというのは非常に生々しいドキュメントです。
坂本龍一は没後に作品が世に出る機会が多くて、まるでジャズ・ミュージシャンのようになってきましたね。ビル・エヴァンスの発掘音源のようです。今後も様々なプロジェクトが動いていくので、「芸術は長し」という言葉を体現するようにこれからも作品化の活動が続いていくように思います。
「美貌の青空」の途中で止まりそうになる演奏は鬼気迫る感じがあって壮絶です。映画では演奏を中断してしまって、それをそのまま映像化しているのに驚かされましたが、こちらの方ではギリギリ演奏は継続されます。この辺りはやはり緊張感があって生々しい。