フィッシュマンズ『ゆらめき IN THE AIR』

フィッシュマンズのラスト・シングルを入手しました。アルバムに入っていない曲なので、これまできちんと向き合ってきませんでしたが、佐藤伸治存命中最後の作品、ということと、ミックスからZAKが離れた作品、ということで、これがきっと最終章だな、という確信がありました。

 

8センチシングルCDで1曲13分という仕様。中古なのでジャケットや盤質は今ひとつですが、音にはあまり関係ない。いや、やはり音圧は低いので恍惚度は減少してしまいますが、それ以上に音自体の持つ浮遊感、彼岸の雰囲気は強烈に漂っています。これはもうあの世に行ってしまっているな、意識が。

 

98年の作品なので、意識していれば手に入れることもできたはずですが、当時はそこまでフィッシュマンズを知りませんでした。もったいないことをしたなあ、ライブも見たかったなあ、などと思って最近はなるべく色々な人のライブに足を運ぶようにしています。

 

プリンス『Hit n Run phase one』


プリンスが亡くなってはやくも10年が経とうとしていますが、先日聴いた『phase two』に続いて『phase one』の方も手にしてみました。2015年のリリースです。

 

どこを切ってもプリンス節ですが、この前にリリースされた『アート・オフィシャル・エイジ』で電撃的な復活を遂げていたので、亡くなる直前の活動は本当に充実していたと思います。また再活性化してきたんだなあ、と横目で見ていましたが、まさかその後にいなくなってしまうとは思いもよりませんでした。思えばデヴィッド・ボウイもそうだったなあ。ご存命であれば『phase three』『phase four』と続いていったんでしょうか。今となってはそれは叶わぬ夢となってしまいました。

 

スカートの澤部渡が言う通り、『phase two』の方が音としては好みのように感じますが、この電子音を使いつつもグニャッとした感じ。この音作りはやはり唯一無二だと思います。気持ち悪い音を洒落たテイストで提示する離れ業を持っている方ですね。

 

2曲目の「Shut This Down」が曲間なしでスタートする感じが非常にカッコいいと思いました。

キャプテン・ビーフハート&ザ・マジック・バンド『Lick My Decales Off, Baby』


キャプテン・ビーフハートの70年リリース4作目が再発されました。これは嬉しい。

 

この作品は前作の『トラウト・マスク・レプリカ』があまりにも名盤なのでどうしても影に隠れがちなんですが、なかなかにいい作品です。とにかくカッコいい。やはりA面の一連の曲がピカイチですね。

 

結構音が複雑になっていて、かなり難易度も増す音楽なんですが、背後に隠れるリフの魅力と、本作から加わったマリンバの音が何気にキーポイントとなっていて、なかなか渋い、鋭い作品です。

 

B面の楽曲群はちょっと難易度が増してしまっていて、混沌具合が凄まじいし、あまりリフもないような楽曲が続くので、後半はちょっとハードルが高いかもしれません。しかしこのアルバムが当時全英チャートで20位までいったなんてとても信じられない。

坂本慎太郎『ヤッホー』


坂本慎太郎の新譜がリリースされました。前作『物語のように』はジャケットがホラー漫画みたいで怖かったので手にしませんでしたが、今回は先行配信の「おじいさんへ」「あなたの場所はありますか?」といった楽曲が強烈だったので、入手せずにはいられませんでした。

 

聴いた印象は結構ナチュラルなもので、音の質感は柔らかくふんわりとしています。基本的に批評精神旺盛な方だと思うので、歌詞の切れ味が鋭く世相を突いてくるんですが、音の方はそれをそのまま鋭く彩るのではなく、優しい音で包み込んで差し出してくる。この辺りは坂本慎太郎の真骨頂ではないでしょうか。

 

そして、ややもすると歌詞ばかりに注目が集まるきらいがある音楽なので、音の方を聴いていくアプローチが求められると思っています。それはスッと入り込んでくる幽霊のようなもので、逆に恐ろしいんですが、端的にシンプルでカッコいい音楽だと思っています。一時期の歌謡路線のようなものも若干後退して、より自然な音になっているような気がします。何だろうな、ソウルでもなく、ポップスでもない。グルーヴのある音楽、とだけ言っておくことにします。

『moonriders LIVE 2026』


ムーンライダーズの50周年記念ライブに行ってきました。今回はキックオフライブなのでまずは前哨戦です。今年はこの後もライブが続くことが予想されますので、冥土の土産にコンプリートしたいと思っています。(流石に九州は行けませんが・・)

 

今回の選曲も澤部渡佐藤優介の若手2名。メンバーからは「オールタイムベストで」と言われて選んだようなので、活動全般に渡った選曲となっていました。

 

冒頭は先日観た『アニマル・インデックス』の40周年記念コンサートのようにスクリーン越しに演奏する趣向で、「悲しいしらせ」が演奏されていましたが、これはリハーサルのような位置付けで、幕が開いて「Who's gonna die first?」が演奏されてからが本番です。冒頭から飛ばしていました。

 

一番良かったのはやはり「砂丘」でした。今は亡きかしぶち哲郎の初期楽曲ですが、メンバーがボーカルをまわして演奏する様はやはり感涙もの。いいバンドだなあ。その後の演奏も代表曲を中心に繰り広げるそつのない展開ですが、「Pissin' till I die」や「You & Us」といったマニアックな楽曲も織り交ぜてあって楽しく聴くことができました。

 

やはり30周年や10周年と比べてしまうのが悲しい性ですが、ここは是非ともスーパー・ムーンライダーズの復活をお願いしたいところです。45周年が若干そんな雰囲気だったので今回は難しいかもしれませんが、やはりここは10周年の再来を期待したいところです。

エリオット・スミス『XO』


エリオット・スミスを聴いたのは直枝政広の紹介を読んだのがきっかけだったと思います。当時はレンタルで借りて聴いたのかな。それから随分と間が空いてしまいましたが、再度直枝政広の文章を読み返して、今度は中古盤を手にしました。98年の作品。

 

エリオット・スミスは「王子」と呼ばれているようで、当時レビューした際にゆらゆら帝国が好きだった同僚の女性からコメントをいただきました。坂本慎太郎は先日新作を発表したばかり。コメントをいただいた女性も、エリオット・スミス自身も亡くなってしまっていて、何となく寂しい感じがします。

 

楽曲の方は弾き語りやバンドサウンドが混ざっていて、ポップさの裏に哀しみが横たわっているような独特の魅力がありますが、ジョン・ブライオンが参加していることを今回初めて知りました。一連の雰囲気がどこかで繋がっている気がしますね。

 

エリオット・スミスの魅力を理解するのはもう少し時間がかかるような気がしていますが、これも見つけたら手にしようと思っているミュージシャンのひとりです。

ロックパイル『Live At Montreux 1980』


ニック・ロウデイヴ・エドモンズが在籍したロックパイルのアルバムは『セカンド・オブ・プレジャー』1作のみですが、ライブ盤がいくつか発掘されていて、そのうちの一つを今回手にしました。こちらは1980年のモントルー・ジャズ・フェスティバルのライブ音源です。

 

音は正直さほどではなかったんですが、それでもバンドに勢いがあるので演奏はタイト。やっぱりドラムがいいんだな。楽曲はデイヴ・エドモンズニック・ロウのアルバムからのものが多いですが、当時のロックパイルの活動はこうしたフロントマン二人のソロ作品も含めて捉えた方がいいんですね。

 

当時は契約の関係でロックパイルとしては1作しか作品がリリースされませんでしたが、その分各自のソロの演奏がロックパイルによってなされていて、それらの総体としてロックパイルは捉えるべき。この視点は解説の長門芳郎さんのコメントで認識を新たにしました。