フランク・ザッパ『Meets The Mothers of Prevention』

f:id:tyunne:20210619101905j:plain


 ザッパ85年リリースの作品。この作品は、当時ロックの歌詞検閲問題で公聴会にザッパが出席した際の議員の発言の音声などをサンプリングした楽曲が中心になっているので、当時もあまり手を伸ばさずにいました。

 

実際にその曲を聴いてみても、英語でのスピーチが中心となっていて、その他全編に渡って発言の断片がコラージュされている。ビートルズの「No.9」やザッパ自身の『ランピー・グレイヴィ』のような感じです。やることは痛快で凄いと思いますが、曲としてはちょっと・・。

 

しかし、今回この作品を手にした理由は別のところにあります。それは「One Man, One Vote」という曲。この曲はザッパがシンクラヴィアで制作した打ち込みによる複雑な楽曲ですが、実はこれをずっと探していた。

 

ザッパをはじめて知ったのはこの作品が発売された当時のFM番組の特集でした。そこで最初にかかったのが『バーント・ウィーニー・サンドウィッチ』の「WPLJ」という曲。そして最後にかかったのがこの「One Man, One Vote」でした。曲名が分からなかったので、その後もどのアルバムに収録されているのか分からずずっと探していたんですが、たまたまYouTubeでこのアルバムの曲を聴いて、やっと判明した次第。長い旅路でした。

 

その「One Man, One Vote」も複雑でスピード感があってカッコいいんですが、その他にもギターソロの楽曲がちゃんと入っていたり、ボーカルものの曲があったりと、悪く言えば散漫、良く言えば多彩な作品となっているので、聴いていて結構気に入りました。やっと聴けて良かった。

ラザルス『A Fool's Paradise』

f:id:tyunne:20210613081412j:plain


べアズヴィル・ボックスで耳に引っかかったのがきっかけで探していたラザルスの73年リリースの2nd。以前に1stは入手して聴いていましたが、ボックスに収録されている「Ladyfriends Ⅱ」という曲がこの2ndからでしたので、本作をいつか聴きたいと思っていました。

 

このグループはピーター・ポール&マリーのピーター・ヤーロウが見出したグループで、1st、2nd共にピーター・ヤーロウはプロデュースにも名を連ねています。中心人物のビル・ヒューズという人は、その後ソロでリリースした作品が日本で話題になったそうですが、これは後々チェックしてみたいと思っています。

 

1stのフォーキーな雰囲気もとてもいいですが、この2ndではそこにグルーヴが加わっていて、とてもグッとくる内容になっています。先に触れた「Ladyfriends Ⅱ」もそうですが、他にも「Baby, Baby」「Take Me High」「This Is A Song」といった楽曲にグルーヴィーな雰囲気を感じます。ちょっとフィフス・アベニュー・バンドを彷彿とさせますね。

 

ラザルスはこの2作目で解散してしまったようですが、べアズヴィル・レーベルの良い部分を象徴しているかのような温かくてセンスのある音が鳴っていて、非常に良いグループだと思います。

ムーンライダーズ『moonriders special live カメラ=万年筆』

f:id:tyunne:20210612100754j:plain


2020年の8月に行われたムーンライダーズの『カメラ=万年筆』全曲演奏配信ライブの音源がリリースされました。

 

当時の模様はダイジェストになってYouTubeにも上がっていますが、今回のリリースは音のみ。映像ではバケツの水の音や掃除機の音などが実際に実演されて、この作品が持つアマチュアリズムに満ちた革新性の種明かしがされていますが、音だけで聴いていた方がむしろ謎めいていていいかもしれません。

 

配信ライブ自体は当時観るのを見送ったんですが、その後映像を観たり、こうして音源を聴いていると、このライブでオリジナルの作品をかなりアップデートしたような印象を受けました。充分に現代版に内容を更新している。

 

そもそもアルバム全曲再現ライブというのはベタな企画ではあれ、最近のトッド・ラングレンスティーリー・ダンの再現ライブを聴いているとやっぱりいいものはいいんですね。元々の作品が好きなんだから、再現されれば良いのは当たり前なんですが、やっぱり躍動感が出る。この『カメラ=万年筆』のライブでもその躍動感は充分に感じられます。

 

そして何より曲がいい。ここ最近、2009年に出た、はちみつぱいのライブ・ボックスを聴き直しているんですが、やはりはちみつぱいから初期のムーンライダーズというのは老成していて、そのノスタルジックで抒情的なところが魅力だった。それが1980年の『カメラ=万年筆』からガラリと変わってニューウェーブに接近したんですが、そこでは実験性だけでなく楽曲のキレ、というかポップな度合いも一皮剥けた感じがあって、その両面の魅力を携えてムーンライダーズは80年代を駆け抜けたんだと思うんです。

 

活動後期のライブでこのアルバムからの曲が演奏されると非常にライブに勢いが出る感じがありました。その位、このアルバムではギアが一段上がった訳です。その熱量が今でも楽曲に宿っている。

 

佐藤奈々子さんがライブに参加されているのもポイントで、アルバムではA面最後の楽曲「幕間」の前に新たに詩を加えて朗読されています。そして「幕間」には2番が追加されている。この佐藤奈々子さんの参加が、ライブに奥行きと気品を加えていると思います。

 

本日はムーンライダーズの結成45周年ライブが開催されますが、もう活動休止どころか完全に復活している感じがあって、ライブもやるし新作も出るということで、まだまだ現役バンドとして活動を続けていくように見えます。これは非常に凄いことです。

ソニー・ロリンズ『Tenor Madness』

f:id:tyunne:20210606073210j:plain


ソニー・ロリンズの56年録音のこの作品は、表題曲でジョン・コルトレーンと共演していることで有名な作品です。

 

実際は、その1曲のみの共演なんですが、これはこの作品の録音時のメンバー、すなわちレッド・ガーランドポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズといった面々が当時のマイルス・デイヴィスのオリジナル・クインテットのメンバーで、そこにコルトレーンが遊びに来たのを招き入れて偶然録音された楽曲だから、という理由があります。

 

こんな感じで気軽に共演できる雰囲気が当時はあって、それを想像するだけでも微笑ましいエピソードです。曲の方も先輩後輩が仲良く寄り添うような、フランクな雰囲気で演奏されています。テナー・サックスが二人もいる演奏曲というのはある意味異常な感じもしますが、聴いてみるとそうでもなくて、賑やかで面白い演奏になっています。

 

後はやっぱりレッド・ガーランドのピアノ。ここでもシングルトーンでコロコロと転がっていて、特に表題曲のソロ演奏はスピード感があって魅力的です。

 

ソニー・ロリンズは最初はマイルスのオリジナル・クインテットに誘われて、それを断って代わりに入ったのがコルトレーンなので、ここでマイルス以外のメンバーが全員集合したというのは非常に象徴的だと思わざるを得ません。でも演奏の方は大袈裟でなくて、あくまで楽しげなのがいいところです。

ユージン・レコード『The Eugene Record』

f:id:tyunne:20210605091716j:plain


京都のαステーションで今年から始まったオリジナル・ラブ田島貴男のラジオ番組で、先日シャイ・ライツというグループの特集がありました。

 

この番組は山下達郎の番組同様、ソウル・ミュージックを沢山紹介してくれる内容なので、とても快適かつ貴重な番組なんですが、このシャイ・ライツというグループの中心人物がユージン・レコードという人。本作はその方の77年リリースの1stソロ・アルバムです。

 

ラジオで流れた曲の中で、このソロ・アルバムからの曲がとても良かった。一瞬マーヴィン・ゲイを彷彿とさせるグルーヴィーな雰囲気もあり、これはなかなか侮れないと感じました。聴いた感じはスモーキー・ロビンソンにも通じるものがあると思います。

 

このユージン・レコードという人はソングライターでもあるので、曲も書ける人がグループにいるという意味でシャイ・ライツは他のソウル・グループと一線を画すということが語られていました。そしていい曲を長く書き続けている貴重なグループだということで、田島さんは絶賛していましたね。

 

これはなかなかいい音楽を紹介してもらえたと思います。シャイ・ライツも少し辿ってみようかと考えているところです。

ジャッキー・マクリーン『A Long Drink of The Blues』

f:id:tyunne:20210530082024j:plain


ビル・エヴァンスを筆頭に、聴く対象がどうしてもピアノものに偏ってしまうので、管楽器の方で何か良さそうなものはないかと色々と聴き返していたら、このジャッキー・マクリーンドナルド・バードが耳に引っかかってきました。ということでこちらは57年録音の作品です。

 

ジャッキー・マクリーンを聴くのはこれが2作目ですが、タイトル曲の録音は前回聴いた『Makin' The Changes』と同じセッションのものからだそう。アナログでいえばA面全部を費やす20分ものの楽曲ですが、冒頭は演奏し直しのメンバー間の会話もそのまま収めていてとても楽しい音となっています。

 

しかしこの作品全体としては収録曲が全てバラードになっているので、若干ゆったりし過ぎかな、と思います。もう少し軽快な音を聴いてみたい。プレスティッジに残されたジャッキー・マクリーンの数ある作品は、同時期に録音したものを複数の作品に割り振っているもののようなので、ここはやはり片っ端から聴いてみたいと思っています。

エンチャントメント『Enchantment』

f:id:tyunne:20210529094047j:plain


山下達郎のサンデー・ソングブックで紹介されて手にしたエンチャントメントですが、番組の中で「Gloriaを買いにレコード屋へ走った」というコメントがあって、てっきりアルバム名だと思っていたらどうやらシングル曲だということが分かって手にした76年リリースの1stです。

 

冒頭の「Hold On」という曲がディスコ調だったので、これはちょっと好みではないなあ、と思っていたところに2曲目の「Gloria」が来て納得しました。スローテンポのメロウなバラードでとても美しい。山下達郎が買いに走ったのもよく分かります。

 

これと、同じくスローバラードの「Sunshine」がヒットしたそうですが、「Sunshine」の方がいい曲のように聴こえました。それにしてもボーカルの歌が上手い。歌がいいのでディスコ調の曲もよく聴こえてくるから不思議です。

 

先日聴いた作品との間にも何作か出ているようなので、機を見て聴いてみたいと思います。