キャノンボール・アダレイ『Somethin' Else』

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58年録音の本作は実質マイルス・デイヴィスの作品といって良いものとなっています。メンバーは下記の通り。

 

マイルス・デイヴィス(tp)

キャノンボール・アダレイ(as)

ハンク・ジョーンズ(p)

サム・ジョーンズ(b)

アート・ブレイキー(ds)

というなかなかの面子です。

 

音の方もマイルスがイニシアチブをとっていて、非常に落ち着いた音色となっており、キャノンボールが大暴れするわけでもなく、アート・ブレイキーがドカドカ叩くわけでもない。そういった意味では少し物足りない感じもしますが、これはこの時期のマイルスの作品の一部として楽しむものなんでしょう。

 

同時期に『マイルストーンズ』が出ているということはモードの一歩手前。静かなジャズが始まる直前に表舞台に出されたキャノンボールのリーダー作の形をとったブルーノートでのマイルス、といった位置付けでしょうか。

ロッテンハッツ『SUNSHINE』

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グレイト3とヒックスヴィルのメンバーが一緒のグループにいたなんて今では信じられないですが、このロッテンハッツというバンドはそういうバンドでした。これは92年リリースの1st。ロカビリー・バンドだと聞いていたのでどんな感じかと思いましたが、いい意味で裏切られています。

 

やっぱり片寄明人の個性がメロウなポップスの方向にあるので、片寄作品は非常にいいです。「One Fine Morning」なんて最高じゃないですか。この方向性と木暮晋也のカントリー・テイストは合わなかったんだろうなあ。あくまで推測ですが。

 

グレイト3とヒックスヴィルの作品は何枚かは聴いていますが、その源流がここにあって、それが言われるほどカントリー・テイスト、ロカビリー風ではなかったというのが今回発見した事実です。

シンバルズ『Love You』

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03年リリースのシンバルズ4作目にしてラスト・アルバム。先日聴いた1stが2000年リリースなので活動期間が短いですね。

 

前作の『Sine』がテクノに寄ったサウンドだったので最終作はどうなっているかと思いましたが、思いのほかジャジーで落ち着いた音でした。この辺の幕の引き方もやっぱりピチカート・ファイヴっぽいなあ。何となく前例が透けて見えてしまうところがシンバルズのアキレス腱のような気がします。でも曲はいい。

 

途中テクノっぽいグルーヴィーな曲があって「これはなかなかいいなあ」と思って見てみたら矢野博康の曲でした。「Bonjour Bonsoir」という曲です。こうして沖井礼二以外のメンバーがイニシアチブをとっているのもラスト作っぽいですね。

 

中古屋でシンバルズを見かけてその後も何度か探した中でなかなか見つからなかったのは土岐麻子のコーナーに置かれていたからでした。当時は元シンバルズの土岐麻子だったんですが、今は知名度が逆転してしまっているんですね。時代の流れというものは面白いものです。

 

メジャーのフル・アルバムはコンプリートしてしまいました。この後はシングルやライブ、カバー集などの作品に手を伸ばすかどうか。気長に悩むことにします。

シンバルズ『That's Entertainment』

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シンバルズとリップ・スライムはシングルをフォローすれば良いと思っていたのでずっとアルバムを聴いてきませんでした。ここ最近中古で見つけた際にやっと重い腰を上げてアルバムを聴き直しているところです。

 

本作は2000年リリースの1st。シンバルズは当時はピチカート・ファイヴのフォロワーかと思っていたので、遅れてきた渋谷系、という印象だったんですが、やはりドラムの疾走感が尋常ではなかったのと、ボーカルの土岐麻子のアンニュイな声がとても印象的で、「これはちょっと違うかな」と思いつつ聴いていました。

 

恐らく参照先は60年代のビート・グループで、キンクスみたいなバンドなんだろうと思います。90年代のジェリーフィッシュみたいなパワー・ポップの感覚も強く出ていますね。9曲目の「ANSWER SONG」から10曲目の「Mach 0.8」への曲間の繋ぎ方なんかはとてもカッコいい。リード・トラックの「My Brave Face」は今聴いても最高にいかしています。

 

コーラスの使い方や音色のリミッターのかけ方など、小西康陽らしきテイストも勿論見受けられるんですが、やっぱり疾走感が違う。メンバーにドラマーがいるのも大きいと思います。矢野博康は今では矢野フェスなるものを主催していたりしますね。高橋幸宏がワールド・ハピネスを主催するようなものかな。

 

アルバム全体を通して聴いていてもいい曲が多い。裏ジャケットのデザインも一貫して同一フォーマットで揃えているところも憎いですね。この辺りの美学が泣かせるポイントだと思います。

ジャッキー・マクリーン『4, 5, and 6』

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56年録音のジャッキー・マクリーン3作目のリーダー作。参加メンバーが豪華です。

ジャッキー・マクリーン(as)

ドナルド・バード(tp)

ハンク・モブレー(ts)

マル・ウォルドロン(p)

ダグ・ワトキンス(b)

アート・テイラー(ds)

ということで知っている名前が続々と出てきます。

 

タイトルはカルテット、クインテットセクステットを意味しているとのこと。以前シェリー・マンでも似たようなタイトルの作品を聴きました。

 

先日聴いたリー・モーガンではないですが、ジャッキー・マクリーンもこの頃絶好調で、参加作含め作品を連発。マイルスとの共演もあるのでいずれ聴かねばなりませんが、ベーシックな50年代ジャズとして勢いのある音が鳴らされています。4曲目の「Confirmation」で1小節ずつソロを回していくところなどは聴いていて楽しくなりますね。

 

一時期ジャッキー・マクリーンドナルド・バードを深堀していこうと心に決めたんですが、若干萎えていたのも事実。ここで再度帯を締め直していくかな。

ザ・バード・アンド・ザ・ビー『Put up the Lights』

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ザ・バード・アンド・ザ・ビーの2020年にリリースされたこのクリスマス・アルバムも配信限定で出ていました。こうした作品が聴けなかったのはやはりロスでしたので、その点は配信を聴き出してよかったと思える点です。

 

このユニットはホール&オーツヴァン・ヘイレンのカバー集なんかも出していて、非常に独特かつ貪欲なんですが、このクリスマス・ソング集もとてもポップで落ち着いた音が鳴っていて穏やかな気持ちになります。

 

リリースを知ったのは土岐麻子のラジオ番組だったような気がします。配信限定なのか・・、と当時は残念に思いましたが、こんな感じで軽やかに作品化されるのを聴いていると、やはり配信というフォーマットはシングルやミニ・アルバムに向いているなあ、と思います。

 

山下達郎も言っていましたが、昔の音楽環境、すなわちラジオで流れてくるシングル曲を聴いていた頃に戻って来ているような気がします。これはきっといいことなんだと思います。

堀込泰行『FRUITFUL』

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昨年2021年にリリースされた堀込泰行の新作。当時はαステーション堀込泰行のラジオ番組が放送されていて、その最終回の方で本作の紹介をして終わったように記憶しています。坂本龍一で言えば『音楽図鑑』の紹介でサウンドストリートが終了するようなものですね。

 

ただ、この新作には手が伸びなかったのも事実。堀込泰行キリンジ脱退以降、ずっとその動向を追いかけて来ましたが、今ひとつ突破力、というか掴みどころがない。兄の堀込高樹がKIRINJIを継承して様々な挑戦を行なっている中で、結果的にソロユニットになってしまいましたが、その過程はとても刺激的なものでした。音楽的実験があった。

 

堀込泰行も様々なアーティストとコラボレーションした作品を出したりして自らの道を模索していますが、結果的にキリンジの代表曲となった「エイリアンズ」のような静かな突出具合が少し丸みを帯びてしまっていて、兄弟ユニットだったキリンジ後期のテイストを脱しきれていないように見受けられます。

 

現時点でも余り例えとして適切かどうかは疑わしいですが、何度か過去にキリンジフリッパーズ・ギターに例えていたことがあって、堀込泰行小沢健二になれるのではないかと夢想していました。現段階では星野源がその立ち位置に近くなっていますが、堀込泰行の普遍性というものは時代への突破力を内在していると今でも思っています。それだけに突き抜け方が足りないのが悔しい。それが本作をCDで手に取らなかった理由です。でも配信で聴けてよかった。