リカリッシュ・カルテット『Fables From Fearless Heights』


ジェリーフィッシュのメンバーが組んだ新たなバンドのアルバムがリリースされました。元々はEP三部作を発表するという触れ込みでしたが、その楽曲をアルバムにまとめて、かつボーナストラックも収録。しかもCDやアナログでパッケージ化されるのは日本だけ、という凄い事態です。スネークマンショーではないですが、日本は本当にいい国だなあ。

 

3作目のEPはこれが出るので聴かずにいましたが、YouTubeなどでは観ていました。本作では9曲目に入っている「Fortunately」という曲は本当にいい曲ですね。ジェリーフィッシュからロジャー・マニングの1stに繋がるメロディアスな側面が存分に発揮されていて、これだけでも充分満足です。

 

こうした過去のキャリアに戻ったような活動を改めて今行うことには抵抗のあるアーティストも多いのかもしれませんが、やはりいいものはいいし、多くのリスナーに支持されている時期の音楽を今の音にアップデートして提供することは、聴く側からするととても安心感、信頼感があることだと思うんです。昨今の小沢健二もそういった感覚で受け止めています。音が溌剌としていてとてもいいですよね。

 

このリカリッシュ・カルテットが果たしてどこまで継続して活動してくれるのかは分かりませんが、やはり少しでも長く続いて欲しい。今回日本のみでパッケージ化されて、きちんとプロモーションも行われているのに少し驚きましたが、これが市場からの歓迎を形にして表していると思っています。

バド・パウエル『Bud Powell '57』


遂にFM横浜のラジオ番組、ハーモニカ・ミッドナイトが終わってしまいました。この番組はジャズを聴き始めた自分にとって、まさに指南役のような存在でしたし、初めて出したメールも読んで頂きました。とても印象深い番組でしたので誠に残念です。

 

その番組で紹介されたうちの一枚が本作からの選曲でした。バド・パウエルは若干時代が古いので、チャーリー・パーカーと共に少し遠ざけていたんですが、この作品からの楽曲は何故か耳を捕らえました。活動のピークはもう少し前の時代のようですが、それでもいい演奏です。

 

タイトルから57年の録音かと思いきや、それは発売年のことで、実際の録音は54年と55年です。メンバーは下記の2パターンです。

 

バド・パウエル(p)

パーシー・ヒース(b)

マックス・ローチ(ds)

 

バド・パウエル(p)

ロイド・トロットマン(b)

アート・ブレイキー(ds)

 

演奏と共に呻き声のようなものが聴こえますが、これはバド・パウエルが演奏しながら歌っているんでしょうね。曲が非常に短いのも印象的です。これはチャーリー・パーカーでもそうでしたが、おそらくは記録メディアの問題ではないかと推測します。

 

バド・パウエルがピアノ・トリオの編成をドラム、ベースに最初に変えた、というのは初めて知りました。

ビル・エヴァンス・ウィズ・ジェレミー・スタイグ『What's New』


69年録音作品。フルート奏者のジェレミー・スタイグをゲストに迎えた作品です。メンバーは下記の通り。

 

ビル・エヴァンス(p)

ジェレミー・スタイグ(fl)

エディ・ゴメス(b)

マーティ・モレル(ds)

 

ジェレミー・スタイグのフルート演奏がとにかくエキセントリックです。出てくる音がまるで尺八を吹いているかの如く聴こえる瞬間もありますし、息遣いを超えてスキャットのように聴こえるパートもある。閃光のようなプレーヤーですね。

 

ビル・エヴァンスのピアノはここでは伴奏のように聴こえてしまいますが、共演を強く望んでいたそうですので、一緒に演奏できてさぞかし嬉しかったのではないかと思われます。

 

マイルスの『Kind of Blue』でオリジナルにも参加した「So What」なんかも演奏の速度が速くて、非常に熱い。冒頭の「Straight No Chaser」も同様にスピードが速いですね。しかし不思議とツンのめっているようには聴こえませんでした。演奏技術がしっかりしているんでしょう。

平沢進『時空の水』


89年リリースの平沢進ソロ1作目。平沢進の作品は『サイエンスの幽霊』『バーチュアル・ラビット』についてはリアルタイムで聴いていましたし、P-モデルの『カルカドル』『ワン・パターン』も折に触れて聴いていたので、この1stがミッシング・リンクでした。

 

タイトルの印象から静かな音楽を予想していましたが、確かにタイトル曲は静かなインストであったものの、全体的には平沢節全開。前後の作風を考えれば当たり前かもしれませんが、少し意表をつかれました。

 

平沢進の作品は部分的にコミカルなところや大仰なところもあるので、なかなか一筋縄ではいかないんですが、必ずキラー・チューンが入っているのが特徴です。この作品でいえば「フローズン・ビーチ」がそれにあたると思います。この無国籍な感じとビートの気持ちよさ、奥行きを感じる音やメロディが非常にいい。こうした楽曲があるから見逃せないんですね。

 

若干世代的にはノスタルジックに感じてしまう部分もあり、かつて友人と一緒に一度だけライブを観に行ったことを思い出してしまいますが、不思議と古さがない音だと思います。それからやっぱり仕掛けが複雑ですね。

バート・バカラック『Reach Out』


バート・バカラックはいつかきちんと聴きたいと思っていたので、今回67年リリースの1stを手に取ってみました。

 

基本的にインストだったというのが少し残念です。7曲目の「A House Is Not A Home」でご本人のボーカルが聴けますが、味のある声でとてもいいので全面的に歌ってくれればよかったのに、と思ってしまいます。

 

基本的にバート・バカラックはソングライターなので、歌い手としてフロントに立つような方ではないから、やはりシンガーが必要になるということでしょうか。まだまだ勉強不足で他の作品を知らないので何とも言えませんが、これまで見聞きしてきた作品や映像からはそうした傾向が見受けられます。そしてこの作品もそうだった。

 

ご本人のボーカルによる作品を期待していたので、この点は少し意表をつかれました。

ネッド・ドヒニー『Hard Candy』


76年リリースのこの作品は、AORの名盤としてよく取り上げられていますが、日本でいうシティ・ポップのような文脈で一時期語られていたヨット・ロックというジャンルで紹介されていたのを目にしたこともありました。

 

かつて放送されていた高橋幸宏のラジオ番組や、夢街名曲堂などでも紹介されて、楽曲を聴く度にいつかは聴かねば、と思っていたので、今回手にとってみました。

 

36分程度の短い作品ですが、とてもいいですね。曲が洗練されています。AORといわれる作品群に詳しいわけではないですし、そういった聴き方をあまりしてこなかったのでジャンル的な意味合いでは説明できませんが、ジャズやソウルのテイストを漂わせつつ、海岸線をイメージさせるような爽やかな音が鳴っている。しかもそれが決して軽薄ではない。そういった意味では山下達郎のような感じに聴こえてきそうですが、自分はむしろジョージ・ハリスンをイメージしました。

 

アヴェレイジ・ホワイト・バンドとの共作曲が入っている、と聞くと少し印象が伝わるかもしれません。

タワー・オブ・パワー『Tower of Power』


タワー・オブ・パワーの作品を久々に入手しました。以前にライブ盤を聴いて少しだけ聴き込みましたが、その後はすっかりご無沙汰していたので改めて新鮮に聴こえます。

 

こちらは73年リリースの3作目。タワー・オブ・パワーに抱いていたファンクゴリゴリのイメージは、以前に作品を聴いた際に若干裏切られましたが、この作品でも結構真っ当なソウルのバラード曲がそこそこ収録されていて、意外と肩透かしを食らってしまいます。

 

タワー・オブ・パワーの絶頂期はここから始まっているようですので、まだ序章の段階なのかもしれません。でもやっぱり真っ当なソウルのバンドなんだなあ、と改めて認識しました。決して悪くはないので聴いていて心地よい音ではあります。ただ、体温が上がるようなファンクかというと、やはり整理されすぎているような印象を受けました。