マイルス・デイヴィス『At Plugged Nickel, Chicago』


65年録音のこのライブ演奏は元々はVol.1とVol.2に分かれてリリースされていた作品です。2枚組の中古を見つけたので今回手に取りましたが、これは本当に凄い演奏。満を持して参加したウェイン・ショーターを抱える壮絶なクインテットです。パーソネルは下記の通り。

 

マイルス・デイヴィス(tp)

ウェイン・ショーター(ts)

ハービー・ハンコック(p)

ロン・カーター(b)

トニー・ウィリアムス(ds)

 

何が凄いってトニー・ウィリアムスのドラムが凄いんですが、この時期のマイルスは『カインド・オブ・ブルー』で確立したモード路線と『ピッチズ・ブリュー』に代表されるエレクトリック・マイルスの狭間に当たるような時期で、なんとなくこれまで見過ごしてきてしまいました。その間をつなぐ上で一番重要なプレーヤーがトニー・ウィリアムスで、この刺激的な演奏は他の追随を許さないと思います。

 

とにかく早いんですが、『フォア&モア』でも驚いた「So What」や「All Blues」の演奏がここでも早い早い。もはやテーマもそこそこに勢いで突っ走る様はまるで別人格を見ているかのようです。短期間でのこの変貌に当時のリスナーは果たしてついていけたんだろうか。

 

ウェイン・ショーターの演奏も地中から這い上がってくるかのようで、全体的にも不気味な迫力が漲っていますが、聴いた感触がなぜか爽やかなのは気のせいでしょうか。そこには実はハービー・ハンコックの貢献があるように思います。