高橋幸宏『A RAY OF HOPE』


高橋幸宏の追悼も今月で最後にしようと思っていますが、こちらは98年リリースの作品。コンピシオのオムニバス的な位置付けですが、山下達郎の『Ray Of Hope』の10年以上先を行っているタイトルですね。

 

しかし今回EMIイヤーズの作品を聴き直してみて本当にいいアルバムが多くてびっくりしました。砂原良徳さんありがとう。丁寧なリマスターのお陰でその価値に改めて気づくことができました。

 

このアルバムもタイトル曲からして本当にいい曲ですが、この辺りのアプローチにはレーベルの経済問題から売れ線狙いの意図もあったのかもしれません。そういった意味では坂本龍一の『スムーチー』や『スウィート・リヴェンジ』の時期に近い。ただしそのストレスに反して差し出された作品はさりげなく高質で、結果的に時代を超えて聴くことができるクオリティを併せ持っています。

 

高橋幸宏の作品の定番は何曲かのカバーといい曲が何曲かとコラボ作品がいくつか、といった感じで定型が成立しつつあった。これが21世紀以降に少し変わってくる訳ですが、ここまでの作品群は一連の旅の行程のように聴くことができる。それはいってみればビートニクスの変装形が前半で、後半に電子音楽が復活してその後のスケッチ・ショウに繋がっていく。その大きな流れに90年代を使ったということになると思いますが、それはまた次作の『THE DEAREST FOOL』で考えてみるつもりです。