これはなかなか説得力のあるトリビュートですね。
参加アーティストが豪華な高橋幸宏のトリビュート盤。細野晴臣や坂本龍一がどちらかというと敬意を表したトリビュートになるのと比較して、高橋幸宏の場合は仲間、先輩みたいな爽やかな目線でカバーしているような印象を持ちます。それぞれのクオリティは恐ろしく高くて、かつ元気がいい。幸せなアーティストですね。ご自分でもかなり喜んでおられたようです。
宮沢りえの『サヨナラ』朗読で始まるなんざ渋い技をお使いになる。その後のWOW WOW HIPPIESの『It's Gonna Work Out』は痛快なサイケポップで実力が伝わってきます。その後トッド・ラングレンですよ。渋いなあ。選曲も非常に意外。トッドは「自分の次のアルバムに入れたい」と言ってるそうです。
見渡してみるとベテラン勢が選ぶのは90年代の楽曲で、若手が選ぶのは80年代という傾向があるような気がします。トッドが『Broadcast From Heaven』から、鈴木慶一が『A Day In The Next Life』から、細野+坂本が『Life Time, Happy Time』からということで、見事に心痛三部作からの選曲です。90年代の高橋幸宏をフォローしたのは大分後になってからですが、楽曲がやっぱりいいんだな。歳をとってから響いてくる。
バンマスのいないpupaが選んだのもちゃんとちゃんとの『元気ならうれしいね』。これもいいアレンジですが貫禄なのはO/S/T(小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ)+Lali Punaのヴァレリーによる『Drip Dry Eyes』。基本に忠実に音を残しながらのエッジの立ったアレンジ。そしてあの囁くようなボーカル。極上品ですね。鈴木慶一の『X'mas Day In The Next Life』もボーカルは女性です。繊細な音楽だから女性ボーカルが似合うんだな。
スティーヴ・ジャンセンはビートニクスの『Now And Then』を選んできました。こちらも基本に忠実なアレンジで微笑ましい。周囲にいい人達がいて、皆に祝福されるというのはやはり人柄なんでしょうか。ラストは「Y」なしのMOによる『Happy Children』。「この曲何だ?」と思って思わずオリジナルを聴き直しましたが元々はインストなんですね。しかも完璧にインタールード的な楽曲。これを何故に選んだのか?で、アレンジは民族音楽風でまさかこんな形で細野晴臣と坂本龍一の合作が実現しようとは。坂本龍一のピアノコンサートに細野晴臣が客演した時に想像したのはもっとクラッシックな世界観でしたが、こうして聴くとアレンジがまだまだウィットに富んでいる。
ということで、WORLD HAPPINESSの前に非常に充実したトリビュート盤を届けていただきました。還暦おめでとうございます。