高橋幸宏『One Fine Night』disc 4

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CDの2枚目。pupa、ソロ、スケッチ・ショウとエレクトロニカ路線が続きます。スケッチ・ショウまでで終わっていたら綺麗だったんですが、最後にビートニクスまで行ってしまう。収録時間の関係でしょうが、少し構成としては勿体ないかな。

エレクトロニカの一連の演奏を聴いていて思うのは「暖かい」ということ。本来クールな音楽のはずが、高橋幸宏の手にかかると非常に暖かいものになる。これは何故なんだろうと考えていました。実際、スケッチ・ショウもフォーク・シンガーのような趣でしたし、その後YMOの再結成に至って、段々と生楽器の比重が増していく。そして直近はNO NUKESでの完全生演奏へと至ります。かつ、細野晴臣高橋幸宏は自らのルーツ・ミュージックへの旅へ、坂本龍一はピアノの音へと帰っていく。

生楽器のグルーヴに再度取り憑かれていく様を観て、80年代の中期に「皆でジェームス・ブラウンを生楽器でやりたい」と発言していたことを思い出していましたが、ここの橋渡しに何故エレクトロニカがあったのか。単に時代の流れ、というより自らの感覚に身を委ねただけなのかもしれない。ただ、ここで聴こえてくるエレクトロニカには人肌を感じるんですね。

恐らくはフォークトロニカのテイストが入って来ることでアコースティック・ギターの音色が加わっていることにも起因していそうです。それからボーカル。やはり歌が中心に存在していて、そこで奏でられる声は暖かい。表現したいものはその暖かみにあって、エレクトロニカはあくまで手法であった、とそんな風にも考えます。

ビートニクスは元々鈴木慶一が入ることで人間味が出てくるユニットですから、暖かみという意味では必然の結果なんですが、エレクトロニカにその要素があることが何故かずっとひっかかっていました。こうして聴いていると特にその両者にギャップはなくて、一直線なんですね。端的に高橋幸宏の声で繋がっている、ただそれだけのことなのかもしれませんが・・。