カン『Soon Over Babaluma』

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久しぶりにカンの作品を手に取りました。74年リリースの6作目。この前作が『フューチャー・デイズ』ですので、あの静謐な世界に耐えきれずにダモ鈴木が失踪してしまった後の作品となります。

 

ダモ鈴木がいなくなったらポップさがなくなってしまうのではないかと心配しましたが、カンの作品の場合、楽曲の根底にずっと流れているリズムがあり、その躍動感が聴きやすさを醸し出していることを痛感しました。ヤキ・リーベツァイトの正確なドラムはとても重要です。

 

聴いていて何となくニュー・オーダーを彷彿とさせましたが、4曲目の「Chain Reaction」なんてほとんどテクノの四つ打ちですので、感覚的にテクノやデジタル寄りに聴こえてくるのは仕方ないと思います。というよりこれが74年の作品なので、何と未来的なことか。

 

プログレとは一味違う宇宙の音を聴いているかのような音楽。しかもビートが常に刻まれているという古びない音楽だと思います。

いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー『アワー・コネクション』

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77年リリースの細野晴臣関連作品。収録曲の半分を細野晴臣が作曲しています。この作品も複数のラジオ番組で最近かかっていて手にした次第。存在は知っていましたが、これまで手を伸ばさずに来ました。

 

やはり基本は歌謡曲、ということで、ごく最初期の細野晴臣の歌謡界進出作品と捉えるのが妥当。演奏は洗練されているのでカッコいいですが、やはり歌詞は歌謡曲の香りが漂うので、聴き方はマニアックになってしまいます。

 

端的に音楽としてどうか、と考えると快適さ半分、気恥ずかしさ半分、といった感じで、のめり込むまではいかないのが適切です。以前聴いた雪村いづみの『スーパー・ジェネレーション』のような感覚。

 

とはいえ細野晴臣の楽曲はやはり時代的にトロピカル三部作前後のテイストがしていて、味わえる感触は外さない。ここまで音源を追いかけられるのは贅沢というものでしょう。丁寧に再発されていて、とてもありがたいことです。

シンバルズ『Sine』

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02年にリリースされたシンバルズのこのアルバムは、ギターポップで来ていたバンドの音が一気にテクノに寄った作品でした。

 

シンバルズはリップ・スライムと一緒で「シングル中心のバンド」だと思っていたのでアルバムにはほとんど手を出さずに来たんですが、ここへきて先日スカートのラジオ番組でこのアルバムからの曲がかかったのを契機に聴いてみることにした次第。

 

バンドの音が一時テクノ寄りになるのはくるりでも起きた現象ですが、その意味合いは一体何か。端的に変化を求めてのことだと推測しますが、音楽の根源は変わらない。ただ表現手法が変わるだけです。

 

シンバルズの場合、元々備えているスピード感が維持されているのが大事で、ここでもその速度は十分キープされています。そしてポップなのが重要。全体の流れの中でシングルカットされた「Higher than the Sun」が始まると、やっぱりワクワクしますね。

 

その後、土岐麻子がソロになって活躍していますし、最近はラジオも聴いていたりするので意外とシンバルズには親近感があったりしますが、ここで過去の音源を復習しておくのも悪くないかな、と感じました。

ビル・エヴァンス『At Shelly's Manne-Hole』

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63年録音のライブ作品。ベースがチャック・イスラエルに変わってからのピアノ・トリオですが、ここでの演奏もとても良いですね。

 

観客の咳払いやノイズがやけに生々しく聴こえてきて、聴いていてびっくりしますが、ヴィレッジ・ヴァンガードの時と違って常にワサワサしている訳ではないので、そこは余り気になりません。ただ、たまに出てきて妙にリアルなので驚くといった程度でしょうか。

 

演奏はアップテンポのものも多くて、聴いていて軽快で楽しい。湿っぽくないですね。各プレーヤーの演奏がそれぞれ主張していて云々といった理屈抜きに、端的にリラックスできる音が鳴っている。ただ演奏のキレが良いので、安定した音が聴こえてくる感じがします。

 

スティックを落っことしたような音とか、突然入ってきてびっくりするなあ。

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ『au Club Saint-Germain Vol.2』

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58年録音の作品。アート・ブレイキーハードバップがどうこういう前に、その熱気と勢いで聴くものを凌駕してしまう。

 

ここでの観客の歓喜にも似た歓声は物凄くて、本当に観ていて強烈に惹かれているんだろうというのが伝わってきます。ダニー・ハサウェイの『Live』やパーラメントの『Earth Tour』のように、会場と一体になって作品を聴かせる。こいつは持っていかれますね。

 

冒頭の「モーニン」なんかは流石に聴いたことのある有名な曲でしたが、それ以上に観客の声が凄い。だからこそタイトルは「Mornin' With Hazel」と表記されているんだそうですが、興奮が半世紀の時空を超えて伝わってくるような、素晴らしい記録を耳にしました。

Lamp『ランプ幻想』

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08年リリースの作品が手に入りました。相変わらず素敵な音が鳴っていますが、今回は丁度今の時期、春先から初夏の梅雨の時期までの期間が似合いそうな、穏やかで暖かな音がしているなあ、と感じています。

 

参照先を探ってしまうのは良くない癖ですが、やはりビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』の頃のような音がしていたり、一転「白昼夢」という曲でははっぴいえんどから細野晴臣までの音がしてハッとさせられたりと、飽きずに聴くことができる作品です。

 

一方で60年代のアシッド・フォークのような暗めのアコギが鳴る瞬間もあったりして、一体この人たちはどの年代からやって来たんだろうと思ってしまいます。全般的に時空を超えている。きっと未来にも同じように鳴っている音楽ですね。これをエヴァーグリーンと呼ぶのか。

 

元々キリンジ冨田ラボの系統から聴き始めてみた訳ですが、思った以上に奥行きが深いように感じています。

スティーヴ・ウィンウッド『Winwood Greatest Hits Live』disc 2

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昨日はこのライブ盤を聴いて、同じように過去のベスト盤的選曲でライブ音源を集めたスティーリー・ダン矢野顕子の作品を流れで聴いてしまいました。

 

こちらは2枚目ですが、何より多幸感があっていい。観客の歓声も感極まっている感じがしますし、演奏している方も楽しそう。いい作品集だと思います。ツアー楽しんでいるんだろうな。

 

元々ラジオで引っかかったのが「Arc of A Diver」という曲だったので、ラストに向けて盛り上がっていく聴き方だったんですが、これは間違いない。締めが非常に美味しいディスクとなっています。やっぱりグルーヴィーだよね。

 

ラテン・ロックの香りがするところもいいと思いますし、何よりオルガンの音がいいなあ。そしてリズムが腰にくる感じ。パーカッションが入っているのもいいですね。ラストの方の楽曲のドラムも切り込みが鋭い。良い点がたくさん見つかる幸せな作品でした。