NRBQ『Dummy』


04年リリースの作品。NRBQはまだ聴き始めたばかりの初心者ですが、基本的にどれを聴いてもいいですね。クオリティが一貫している。この辺りの安定感はスクイーズに近いものがあります。長寿バンドという意味ではムーンライダーズにも近い。音楽性は異なりますが。

 

どれを聴いてもいいので作品ごとの違いまでまだ理解しきれていないんですが、比較的最近の作品ということで、音がすっきりしているような気がします。しかしリズムはタイト。基本的に骨太なバンドなんだなあ、という印象を持ち始めています。

 

そんな中でも「All That's Left To Say Is Goodbye」のようなボサノヴァのカバーなんかもあって、その音作りは非常に洗練されている。この人たちは基本何でもこなすバンドなんですね。ロックンロールに止まらずにボサノヴァもジャズも演奏する。懐が深いバンドだと思います。聴き進めていくのがとても楽しみですね。

サル・サルヴァドール『Frivolous Sal』


真夏の夜のジャズ』にも出ていたギタリスト、サル・サルヴァドールの56年録音作品。非常にいいですね。

 

映画ではソニー・スティットと一緒に演奏していましたが、夏の海によく似合う高めの音で、目をつぶって弾いている姿がとても印象的でした。ここでも同じような音が鳴らされています。非常に心地よい。特にテンポの早い曲がいいですね。映画と全く同じ音がしています。これは期待通り。

 

ジャズのギター作品はこれまで余り聴いて来ませんでしたが、これをきっかけに聴いていきたいと思わせる非常に爽やかで気持ちのいい音です。ピアノはエディ・コスタですが、楽器をヴィブラフォンに持ち替えて演奏するバックでギターがコード音を奏でているのも非常に印象的です。これは良いものを聴きました。

ドナルド・バード『Fuego』


ドナルド・バードの作品もしばらくご無沙汰していましたが、こちらは59年10月の録音。偶然にも昨日聴いたキャノンボール・アダレイのライブ録音と同じ時期にあたります。

 

メンバーは下記の通りです。

ドナルド・バード(pocket tp)

ジャッキー・マクリーン(as)

デューク・ピアソン(p)

ダグ・ワトキンス(b)

レックス・ハンフリーズ(ds)

ということで結構豪華。デューク・ピアソンはこれが初録音だそうです。

 

これがファンキー・ジャズだ、と言われてもあまりピンときませんが、比較的落ち着いた音が鳴っています。ドナルド・バードの自作曲で占められているんですが、とにかくテーマが分かりやすい。結果、とても聴きやすい音楽になっています。

 

音も整理されていて、あまり勢いよく聴かせるナンバーはありません。この落ち着き度合い、分かりやすさがちょっと自分にとっては物足りなく聴こえました。悪くないんだけど引き込まれない。こうなってくると最早言葉では語れなくなってしまいます。一体何が足りないんだろう。単純に好みの問題かもしれませんが、クリア過ぎてもカッコよくなくなってしまう。そんな感じがしました。何故なのかはもう少し考えてみようと思います。

キャノンボール・アダレイ『The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco』


キャノンボール・アダレイはこれまで聴いてきた作品が実質マイルス・デイヴィスビル・エヴァンスの作品に近いようなものばかりでした。本格的に聴いていくと恐らくは勢いのある作品が多いんだろうと予測していた。しかし、この作品で緩やかにその予想を裏切られました。勿論いい意味で。

 

59年にサンフランシスコでライブ録音されたこの作品でキャノンボールはマイルスの元を離れて独立していったそうですが、とてもいい作品です。比較的テンポが緩やかだったのが意外でしたが、非常に雰囲気が良い。そのキーマンは恐らくボビー・ティモンズだと思います。

 

冒頭の「This Here」という曲がボビー・ティモンズの作品ですが、この曲は非常に洒落ていて、モダンな雰囲気があります。当時ボビー・ティモンズジャズ・メッセンジャーズキャノンボールのバンドを掛け持ちしていたそうですので、それだけでも脂が乗っているのが分かりますが、ここでのピアノのソロ演奏も素晴らしいです。

 

キャノンボールのサックスと弟のナット・アダレイのトランペット、そしてボビー・ティモンズのピアノがそれぞれソロを取っていく展開がほとんどの曲でなされているのもいいですが、ピアノのソロのバックで2管が盛り立てるアレンジなんかもあってとても楽しい。聴いていて幸せになる作品でした。人気があるのも頷けます。

XTC『Live... Amsterdam』


XTCのライブ音源がまたもやリリースされました。前回のリリースでもドイツでのXTCがツアーをやめる直前の82年のライブ音源がリリースされましたが、そちらは82年の2月10日、今回はオランダでの3月8日の音源です。約1ヶ月後のライブとなります。

 

『イングリッシュ・セトゥルメント』の発売が82年の2月で、ドイツの公演はその直後でしたので、今回の方が若干時間が経過しています。それにしてもアンディ・パートリッジがツアーの恐怖症で倒れてしまう直前の演奏ですので、記録としては貴重です。聴く限りでは不調は全く感じられません。音もさほど悪くはありませんでした。

 

このライブ音源のポイントは前半と後半の対比にあると思います。

 

『イングリッシュ・セトゥルメント』からの楽曲は前半の7曲なんですが、結構スタジオ録音版と同等の演奏がなされていて、演奏力の高さに驚かされます。今回は「Melt The Guns」が演奏されているのが目を惹きますね。ライブ・バージョンを初めて聴きました。

 

スタジオ録音版の音は非常に構築されていて、アコースティックのオーケストレーションが素晴らしいんですが、ライブではやはりXTCが本来持ち合わせる荒々しさも表現されていて、これまでのXTCらしさが音に出ています。それはそれでいいんですが、問題は後半です。

 

後半の楽曲は前作の『ブラック・シー』、前々作の『ドラムス・アンド・ワイヤーズ』から選曲されているんですが、ここでの演奏の安定度が全然違う。既に何度もライブで演奏されているし、かつこの2作の楽曲の作り方はかなりライブを意識して作られたものなので、当たり前ではあるんですが、それでも安定力が全然違います。肉感的なんですね。

 

前半の『イングリッシュ・セトゥルメント』からの演奏は当時の新作ということを差し引いても、肉体性より作家性が勝っている。既に曲作りの段階でライブを想定していない部分も多分にあって、やはりこの作品から潮目が変わっているんだと思います。ですから、アンディ・パートリッジがツアーを直感的に拒否するのもむしろ自然の流れで、この変化が前半と後半の演奏の対比で見事に表現されている。このライブ音源はそれを如実に表していると思います。

 

貴重な音源というだけではなく、XTCの変わり目を目撃する音源になっているのが本作の興味深いところではないでしょうか。

アート・ブレイキー『A Night At Birdland Vol.1』


以前に聴いた『バードランドの夜』ですが、やはりVol.1の方も手に取りました。

 

Vol.2を聴いて何故か今ひとつのめり込めなかったため、アート・ブレイキーはしばらく遠ざけようと思っていたんですが、その後にこのVol.1収録の楽曲をラジオで耳にしたりすると、やはり耳に引っかかってきます。

 

加えて、YouTubeで観たタモリのジャズ番組で紹介されていたジャズ・メッセンジャーズの映像が物凄くインパクトがあって、やっぱりアート・ブレイキーは凄いなあ、と思っていたところでした。ドラムのスティック捌きは目を見張るものがあります。

 

ということで、Vol.2なのでVol.1とメンバーは同じですが、念の為記載しておきます。

クリフォード・ブラウン(tp)

ルー・ドナルドソン(as)

ホレス・シルヴァー(p)

カーリー・ラッセル(b)

アート・ブレイキー(ds)

 

で、どうだったかというとやはり聴いた感触が変わらない。いいんだけど没頭できない。これは何故なんだろう。54年録音だから音が良くないからか。それとも秋口に入って気温が下がってきたからか。などと色々と考えてしまいましたが、結論は出ていません。もしかしたらもう少し後の音源、リー・モーガンウェイン・ショーターの頃の音を聴いてから判断すべきかな、と考えています。

ビル・エヴァンス&ジム・ホール『Undercurrent』


62年録音のビル・エヴァンスジム・ホールとの共演作品。繊細な音が鳴っています。

 

この時期はビル・エヴァンススコット・ラファロを失ってしばらく演奏活動ができなかった時期を乗り越えてやっと動き出していた頃ですが、同じく繊細な音を奏でるジム・ホールとのセッションはとても相性が良くて、音からは静かなパワーが伝わってきます。

 

ジム・ホールは先日観た『真夏の夜のジャズ』にもチラッと出演していましたが、ジャズにおけるギターの音というのは物凄く小さくて高い音、という印象があります。従って、ビル・エヴァンスのピアノの音と極端に言えば余り区別がつかない。どちらが主旋律に入れ替わっても一瞬気付かないような融合を成し遂げているような気がします。表現する手法がジャズの中においては似通っているのかもしれません。

 

それぞれのソロが綺麗に紡ぎ出されるので、聴いていてとても落ち着いた気分になりますし、一音一音を大切に受け止めたいと思う不思議な邂逅です。