キャノンボール・アダレイはこれまで聴いてきた作品が実質マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスの作品に近いようなものばかりでした。本格的に聴いていくと恐らくは勢いのある作品が多いんだろうと予測していた。しかし、この作品で緩やかにその予想を裏切られました。勿論いい意味で。
59年にサンフランシスコでライブ録音されたこの作品でキャノンボールはマイルスの元を離れて独立していったそうですが、とてもいい作品です。比較的テンポが緩やかだったのが意外でしたが、非常に雰囲気が良い。そのキーマンは恐らくボビー・ティモンズだと思います。
冒頭の「This Here」という曲がボビー・ティモンズの作品ですが、この曲は非常に洒落ていて、モダンな雰囲気があります。当時ボビー・ティモンズはジャズ・メッセンジャーズとキャノンボールのバンドを掛け持ちしていたそうですので、それだけでも脂が乗っているのが分かりますが、ここでのピアノのソロ演奏も素晴らしいです。
キャノンボールのサックスと弟のナット・アダレイのトランペット、そしてボビー・ティモンズのピアノがそれぞれソロを取っていく展開がほとんどの曲でなされているのもいいですが、ピアノのソロのバックで2管が盛り立てるアレンジなんかもあってとても楽しい。聴いていて幸せになる作品でした。人気があるのも頷けます。