『パーマネント・バケーション』

同じくジム・ジャームッシュの映画。これは卒業制作で作った最初の作品のようだ。やっぱり最後に主人公は旅に出てしまう。淡々とした語り口も『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の原型のように映る。偶然手に入れた金を利用して旅立つエンディングもね。

「孤独を紛らわすために漂流する」と話すシーンがあるが、この映画も徹底的に暇人の日常を描いている。若干こちらの方がシリアスなのは、精神病の患者が次々と画面に出てくるからだろう。主人公の母親を皮切りに男女・人種問わず様々なパターンでそれは描かれるが、30年前と現在では日本でも精神病に関するリテラシーは随分と変わったので、これもまた日常に見えてしまう。

ここで思い出すのはゴダールの『気狂いピエロ』で、あの映画でも海辺で謎の男と主人公が語らう場面がある。何となくそのシーンが好きなんだが、この映画でも主人公がクールに色々な人に接して話を聞いていくので、似たものを感じた。

パーマネント・バケーション』とは「終わらない休暇」という意味のようだが、これもやはり宮台真司の「終りなき日常」を彷彿とさせる。延々と何もなく過ぎ去っていく日常を休暇と捉えればこうした映画になる。こちらが80年だから15年先行している訳だが。

昨日はたまたま午前半休で何事もない時間を家内と過ごしたが、こうした何にもない時間というものがいかに大切か、そしていかに無常かを考えた。スチャダラパーではないが、必死に暇を潰しているのが趣味だったり仕事だったりするのであれば、糸井重里風に言う「われわれは何てことないものです」といった意味を追求しない生き方をどうやって受け入れるか、そいつが課題なんだろうと思う。