山下達郎『OPUS』disc 2

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山下達郎の歌声を聴いた子供が「演歌みたい」と言ったという話をツイートで見た記憶があります。ボーカルスタイルが粘っこいのでそう聴こえたのかもしれませんが、最初にそのツイートを見た時は可笑しかった。レコード会社移籍後はすっかり御大と化した感がありますが、どの曲も耳当たりがよくてすっきりと入ってきます。かつエコーもたっぷり効いていて王道のポップスとして昇華している。そのため刺激も少なくなってきました。カラオケでも歌ったなあ。

『ポケット・ミュージック』からレコーディングもデジタル化されて音も構築感が益々増してきています。とはいえその前から既にファンキーというよりも奥行き重視の構築音楽という印象が強いですね。山下達郎をきちんと聴いてみようと思ったのが比較的最近だということもあって、こうした表舞台の曲群には自然と耳に入ってきた記憶があります。『ポケット・ミュージック』と『アルチザン』は何故か持っていて、『ポケット~』の方はどこかに紛失中というていたらくですが、滅多に聴き返すことがない。ヒット曲の宿命と言う奴か、はたまた飽きなのか。

やっぱり躍動感の差なんだと思うんですね。いい曲も多いし、このディスクに納められた楽曲も素晴らしいものばかりですが、「日本の歌」みたいになってしまって若干食傷気味。刺激の少なさがこれまで遠ざけてきた原因なんじゃないかと思いました。でも細部に渡って要素は多彩だし、何よりオルタナティヴから始まった王道ポップスは決してそのクオリティを落とすことがない。そして背景を語り続ける論客ぶり。このあたりは本人もジャンルによる宿命といった類いの発言をしていて、大滝詠一と共に今後もついて回るキャラクターなんじゃないでしょうか。王道の陰に隠れたファンクはジワジワと真綿で首を絞めるように社会に浸透していって止まらない。中高年の夢を携えて今後も代弁者たれ。