奧田民生『GOLDBLEND』

f:id:tyunne:20181116202903j:plain

90年代を過ぎてからの奥田民生は若干の安定感と失速、そしてメジャーフィールドで活躍しながらマニアックな音楽をポップなオブラートに包んで世間に届ける術を身につけて孤独な作業に没頭するに至る、という経緯を辿っていきます。2000年にリリースされた本作ではマイペースを変えずに周囲の騒がしさをものともせずに淡々と、見た目は派手な音を鳴らしながら通り過ぎていきます。

シングル曲の「マシマロ」こそキャッチーなものの、全体的には多少の迷いも感じられる作品となっていて、凹凸が実は激しい。これまであったお遊びソングは影を潜め、緩急は音の強弱に置き換えられています。強めの音像から繰り出されるのは表面的な勢いとは異なり、成熟一歩手前の寸止め感が漂っています。突き抜け方は『股旅』には及ばず、何かが欠落している。それは音楽業界への諦めか達観か。この時点では分からなかった。その感覚は次作でも続くことになります。