フランク・ザッパ『Greasy Love Songs』

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ザッパの音楽を初めて耳にしたのは『Burnt Weeny Sandwich』に収録されている「WPLJ」というドゥー・ワップの曲でした。ザッパのドゥー・ワップはどこか不気味で、楽曲自体はまともでも音やミックス、各パーツのバランスなどがどこかアヴァンギャルドな感じがする奇妙な音を鳴らしています。変態的なんですね。元々のドゥー・ワップに詳しくないので何とも言えませんが、確実におかしな音像で、それがなければ自分の耳にも引っかかってこなかっただろうと思います。

本作はドゥー・ワップばかりを収めた68年のアルバム『Crusing With Ruben & The Jets』のオリジナル・ミックスをCD化したもの。同作はCDでの再発時にドラムとベースが差し替えられており、当時はオリジナルの音は中古のレコードを探して聴くしか手段がありませんでした。実はレコードも持っているんですが、結局同タイトルとしてはオリジナルの音で再発されることはなく、本作で初めて公式にオリジナルの音源がCDで世に出たことになります。

以前も書いたことがありますが、「"No. No. No."」が非常にカッコいい曲で、とてもじゃないけど68年の音とは思えません。手法が伝統的で音が前衛的、しかも賞味期限が長いという不思議な作品で、再発時に紆余曲折がある、というややこしいアルバムですが、こんなことも含めてザッパの世界は奥が深い、とも言えそうです。