堀込泰行『FRUITFUL』

f:id:tyunne:20220106063750j:plain


昨年2021年にリリースされた堀込泰行の新作。当時はαステーション堀込泰行のラジオ番組が放送されていて、その最終回の方で本作の紹介をして終わったように記憶しています。坂本龍一で言えば『音楽図鑑』の紹介でサウンドストリートが終了するようなものですね。

 

ただ、この新作には手が伸びなかったのも事実。堀込泰行キリンジ脱退以降、ずっとその動向を追いかけて来ましたが、今ひとつ突破力、というか掴みどころがない。兄の堀込高樹がKIRINJIを継承して様々な挑戦を行なっている中で、結果的にソロユニットになってしまいましたが、その過程はとても刺激的なものでした。音楽的実験があった。

 

堀込泰行も様々なアーティストとコラボレーションした作品を出したりして自らの道を模索していますが、結果的にキリンジの代表曲となった「エイリアンズ」のような静かな突出具合が少し丸みを帯びてしまっていて、兄弟ユニットだったキリンジ後期のテイストを脱しきれていないように見受けられます。

 

現時点でも余り例えとして適切かどうかは疑わしいですが、何度か過去にキリンジフリッパーズ・ギターに例えていたことがあって、堀込泰行小沢健二になれるのではないかと夢想していました。現段階では星野源がその立ち位置に近くなっていますが、堀込泰行の普遍性というものは時代への突破力を内在していると今でも思っています。それだけに突き抜け方が足りないのが悔しい。それが本作をCDで手に取らなかった理由です。でも配信で聴けてよかった。