ビル・エヴァンス『The Paris Concert Edition One』


79年録音作品。晩年のビル・エヴァンスも非常にいいですね。特にこのパリでのコンサートはずっと聴きたかったもの。

 

とにかく各楽曲のエンディングが素晴らしい。こんな風に終わっていいの?というクロージングが連発しています。しかしこれは果たしてジャズなんだろうか?という疑問も湧いてくる程前半はクラシカルな演奏が続きます。

 

「My Romance」なんかはベースやドラムのソロも入って来ますし、後半は結構スウィングする感じですが、それにしたって「I Loves You Porgy」の崩し方なんかは相変わらず圧倒的。基本的なテーマが裏にあって、そこからの装飾が頭の中で駆け巡っているかのような演奏。それも即興で。これはやはりジャズというものの真髄ですね。

 

「Beautiful Love」も最高。このドラムが入る前のビル・エヴァンスのブレイク前の一瞬の演奏、鍵盤を裏指でなぞる音はいつ聴いてもゾクッと来ます。このスピード感は本当にカッコいいなあ。

 

最近またドラムを始めたこともあって、楽器の演奏というのは基本は鍛練であることを思い知っている最中なんですが、この直向きなピアノに向き合う姿勢、そして鍛錬の果てに繰り出す演奏が一瞬一瞬の時間を彩っていく様、その背景には孤独で地味な作業が存在します。それを受け入れて乗り越えられるかどうか、これは非常にシビアなんですね。

 

ビル・エヴァンスという人はそうした姿勢をとても大事にした人のようですので、圧倒的に信頼できる。どの作品も最高ですが、この晩年の鬼気迫る美しさもやはり見逃せません。