細野晴臣『コインシデンタル・ミュージック』

f:id:tyunne:20181024211644j:plain

85年リリースのCM楽曲集。こちらも買い直しを大分渋っていましたが、今回遂に手にしてしまいました。で、当たり前ですがCDはいい音ですね。聴こえなかった音が少しずつ聴こえます。

このアルバムの曲はほとんどが即興で作られた楽曲で、気楽な感じの雰囲気が全体的に漂っていてかつ陰影があるという見事な作品になっています。『Sayokoakatti』とか『Mazinger H』とか好きだったなあ。先日聴いた『銀河鉄道の夜』の元ネタなんかもあって、言うなればサウンド・スケッチのような様相です。モナド・レーベルから出た作品ですが、この時期としては結構ポップな方の部類で、アナログで結構何度も聴いたような気がします。ちょっとしたアイディア集みたいな感覚もあり、耳に残るフレーズもCM用だからあるんですね。ムーンライダーズ大滝詠一のCM曲よりもシンプルで少し交響楽的な雰囲気もあります。思えば80年代の中盤に既にこうした静かな世界観を提示できていたという、非常に先鋭的な足跡でもあり、その後のアンビエントや今の少し抑制された世の中を暗示しているようでもある。OTT、過剰の裏返しで、チルアウト的な役割を担わせてもいたのかな。そう考えるとモナドはもう少し見直されてもいいように思いますね。

で、ラストの『Memphis , Milano』がやはり感動的。単純な循環なんだけどグッと来るものがありますね。長いのもいい。ある種宗教的で、どこかに連れて行ってしまいそうな、かつ綺麗でポップな小品です。カッコいいなあ。この中毒性が細野晴臣の真骨頂だと思います。