ムーンライダーズ『Live At Shibuya Kokaido 1984.7.14』

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84年にリリースされた『アマチュア・アカデミー』は自分がムーンライダーズで一番最初に聴いたアルバムです。当時千葉駅の駅ビルで買って帰って「一体どんな音楽なんだろう」と思いながら聴いた記憶があります。想像に反して意外とポップで拍子抜けした印象がありますが、何といっても歌詞がシュールだったので、水泳部の部室で麻雀をしている時に口ずさんでいて「何?その曲」と言われていました。その後、何人かの友人に貸したところ評判が非常に良かった。このアルバムはムーンライダーズの中でも比較的ポップなアルバムなんですね。

そんな『アマチュア・アカデミー』の時期のライブが音源化されました。前半はその前の作品群を演奏していますが、これが結構骨太でいい感じ。『アマチュア・アカデミー』に漂っているシンプルなリズム・アレンジが『ヴィデオ・ボーイ』や『青空のマリー』といった曲にも施されていて、とても渋谷公会堂とは思えない、まるでライブハウスでの演奏のような臨場感を持ってこちらに迫ってきます。『砂丘』のアレンジもプリミティブなビートに乗せて躍動的に表現されていていいですね。84年という年は『マニア・マニエラ』がカセットブックで出た年でもあるので、『滑車と振子』『ばらと廃物』『工場と微笑』といった渋い選曲での演奏も盛り込まれていて非常に嬉しい。

まだ発売前のライブということもあり、『アマチュア・アカデミー』からの曲には観客も反応が覚束ないところもあって微笑ましく聴こえますが、やっぱりこのアルバムの曲はいい曲が多いので、ライブで聴けるというだけでも貴重ですね。結構テープも使っているところもありますが、アレンジを工夫している曲もあって聴き逃せません。曲名が全部記号なので、曲紹介をしても観客が静まり返っているのもご愛嬌。それにしてもビートが強い。

鈴木慶一もライナーで言っている通り、ここでは80年代前半を総決算している感があって、『青空百景』『マニア・マニエラ』といった傑作群から直結している勢いが音に出ている気がします。それがこなれてきた電子音とバンドサウンドの融合と相俟って独特の温かさとフィジカルな躍動感を生み出しています。『工場と微笑』がラストですが、第2部の冒頭に演奏される『Y.B.J.』と工場、機械という意味で繋がっていることを今回認識しました。どちらも羽田から出てきた機械の匂いがするんですね。