ムーンライダーズ『Live at FM TOKYO HALL 1986.6.16』disc 3

f:id:tyunne:20181030203032j:plain

ラスト!『マニア・マニエラ』から『アニマル・インデックス』まで若干順不同で名曲群が続きます。岡田徹を除いたソロまわしの一環で当時発売直前の『夏の日のオーガズム』収録の『今すぐ君をぶっとばせ』が演奏されているのがまずは最高。MCで『夏の日のオーガズム』がNHKで放送禁止になったことが明かされますが、元々が女性アナウンサーに「オーガズム」と言わせたかった等というAVまがいの趣味を明かす様は痛快です。

それにしても3時間。これ、1枚ずつ聴いてるから平気ですが、ぶっ通しで聴いたら恐らく疲れてしまうでしょう。冒頭に鈴木慶一自身も言ってますが、聴く方も疲れるけどやる方はもっと大変で、まさに体力の限界まで体を使うことで感傷を吹っ飛ばしてしまう意図に裏打ちされた10周年の記念イベントです。この後倍のメンバーで行うスーパー・ムーンライダーズも控えてるんですから凄いの一言です。本当にタフだったんだなあ。もうこの時点で伝説化しています。

聴いている中では『30』が一番躍動的に聴こえました。リズムがタイトなんですね。絶頂期のこの時期の音源を聴いているとどうしても当時のことを思い出してしまいますが、それから30年くらい経って自分の環境も一変しました。遡ると悲しいこともあって楽曲に重ね合わせないまでも当時の環境を思い出してしまいますが、それはそれ、これからのことに変換していくべきですね。

ラストの17曲メドレーは壮絶で、これは『ワースト・オブ・ムーンライダーズ』にも収録されていましたが、改めて聴くとアーカイヴの実演版という非常に高度な技を繰り出していて、生で観る方はたまったもんじゃないような気がします。86年の時点でムーンライダーズの歴史をすべて知り尽くしていた訳ではなかったため楽しみ方も限定されていましたが、今聴くと凄まじいものがあります。えらいことやってたんだなあ。

ムーンライダーズというのはつくづく不思議なバンドでしたが、鈴木慶一のコンセプトに拘る姿勢が最終的には賞味期限を長くしていたように思います。残っていくものは音と共に紐づく精神性なんですね。再現しても発掘しても面白い。背景に語るものが多い程長続きして発見の余地を多く残す。このあたりの所作はそうそう真似できるものではなくて、やはり「手法が残っていくバンド」なんだなあと実感しました。