ムーンライダーズ『カメラ=万年筆』

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ムーンライダーズニューウェーブに舵を切った80年代の幕開けを告げる作品。遡って聴いた際にはその剥き出しの勢いに圧倒されました。

マチュアの革新。すべての曲名が映画のタイトルからとられており、映画の内容を知るものからすると内容のギャップも楽しめるという複層的な仕掛け。鈴木慶一のしゃくれ唱法も確立され、それまでの友人も失う程の変貌はリアルタイムで体験したらさぞかし驚いたでしょうが、後追い世代からすると鋭い作風はここまで、という印象を残します。

その突出具合から繰り返し聴くことを作品自体が拒否しているような佇まいを持つため賞味期限は実は短かった。ただ、後期のライブハウス等での演奏で本作収録の楽曲が鮮やかに復活する様を目撃すると、この作品の重要性が相対的にあぶり出されて来て興味深い。その後の名作群の原石、出発点がここにある。そんな重要作です。