ムーンライダーズ『MODERN MUSIC』

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このアルバムは「バック・シート」に尽きますね。かしぶち哲郎の名曲がこのアルバム自体を牽引している。

ニューウェーブ一歩手前の前期ムーンライダーズの朴訥とした到達点。実は『カメラ=万年筆』からこの作品に遡るには随分と時間がかかりました。はっぴいえんどYMOの間に横たわる断絶と同様、本作と次作の間にも大きな切断があって、ここを起点にファン層も分かれていった。実際には前兆も見受けられるんですが、やはり大分違います。

で、前期のライダーズが悪いかというとそんなことはなく、要するに大人向けなんだと思います。時代の後押しもあって80年代は全体で押し迫ってくる波があらゆるものを前に流していった。70年代はまだそこまでの流れがなかったんでしょう。その後、アーカイヴ的にライブで前期の楽曲も演奏されているので収録曲もお馴染みになりますが、それまではほぼ違うバンドのように感じられました。

で、「バック・シート」ですが、流石の鈴木慶一も「これは凄い曲だな」と感服したという映像的な素晴らしい作品。そこに引っ張られるようにして出来上がったアルバムは多彩で成熟した作品になりました。