カーネーション『Parakeet & Ghost』(Deluxe Edition)

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99年リリースのカーネーション9作目。先日『天国と地獄』の再発盤を聴きましたが、そのついでに買い逃していた一連のコロムビア作品再発盤を見ていたら結構入手困難になっていることに気付きました。特に後半の作品はきつそうだったので、「これはそろそろまずいかな」と思っていた矢先に中古屋で見つけてしまいました。少し迷いましたが、やはり後で後悔するのでここはいくしかないでしょう。

この作品はとても混沌としています。リリース当時はその重さに少し引いてしまって随分と聴かない時期がありました。聴き直して再評価したのはつい最近のことですね。iPODでアーティスト別に聴くようになって以降かな。

インストが入っていたり音響系に寄っていたり収録時間が70分以上もあったりと、全体的には要素詰め込み過ぎのお腹一杯アルバムなんですが、楽曲自体は光るものがあって改めてカッコいいな、と感じています。『Rock City』『たのんだぜベイビー』『Planet Radio』なんかはやっぱりいい。変に装飾した構成にしなかった方が良かったんじゃないかなあ。でもこの時はカーネーションとしても結構悩める時期だったようなので、こうした破壊衝動を具現化する必要があったんでしょう。

シングルB面の『恋の不思議惑星』がDISC2に収録されているのは嬉しい限りです。これはオリジナルバージョンの方が断然いいと思っていましたが、実際聴き比べると迫力はアルバムの方がありますね。ここに上田ケンジの効果が出ている。『Rock City』なんかもHome Demoで既に楽曲としては完成しているんですね。それがアルバムでは轟音で増幅されている。この拡張がコロムビア後期の揺れ動くカーネーションには必要だったんだと思います。

このアルバムを引っ張りだして再度聴き直したもうひとつのきっかけはmixiカーネーションコミュニティでセルフランキングのトピックを見た後のことでした。『月の足跡が枯れた麦に沈み』『グッバイ!夕暮れバッティング・マシーン』といった完璧にスルーしていた楽曲を好きだと言っている人が意外に多かった。ということで改めて聴き直したんですが、実際どうなのか。確かに聴きやすいんですが前述の『Rock City』や『Planet Radio』には敵わない。よく見てみたら矢部浩志の曲なんですね。確かに聴きやすいんです。でも直枝政広の粘っこさにやっぱり軍配が上がると思います。カーネーションにも色んな聴き方があるんだな、という至極当たり前なことを考えました。

それにしてもデモの完成度は非常に高い。これで通用してしまいそうです。このあたりもXTCチルドレンとして王道を行っている気がしますが、それが音響派に化ける過程はやはりスリリングではあるし、無価値ではないと思う。『ヘヴン』で感じるレディオヘッドのような感覚もその当時の時代性を反映している訳だし。この過剰感が第二の『天国と地獄』を体現している訳ですが、ちょっと違うのは5人体制のバンド編成が終焉を迎えつつあったということでしょう。その失意が反転して轟音という形で表現されている。『天国と地獄』がアッパーな破壊衝動だとするなら、こちらはダウナーな破壊衝動なんだと思います。