Controversial Spark『Section 1』

鈴木慶一という存在は相対的に浮き上がってくるものだと思います。

f:id:tyunne:20181102194633j:plain

ムーンライダーズ活動休止後の活動がここへ来て活発化し始めていますが、まずは鈴木慶一の新バンドのフルアルバム、その後今月来月で鈴木博文白井良明と続いてかしぶち哲郎のトリビュート、追悼コンサートでのライダーズ復活にとどめを刺します。初期音源の発掘もあるようですので、これはいくらお金があっても足りません。

ということで本作をまずは皮切りに聴きましたが、大分結成当初の頃からは角が取れてポップになって来ているという印象を受けます。20代から60代までの男女混合編成ですが、同様の趣向に新生KIRINJIがある。ただ、あちらの方は堀込高樹のワンマンバンドとなっていますが、こちらの方は各メンバーに権限委譲して各々の楽曲をバランスよく配置している。ここで想起されるのはやはりムーンライダーズなんですね。そもそもがザ・バンドのように各メンバーが曲も書いてボーカルもとる、というバンド形態を鈴木慶一は目指していたので、今回のバンドでもそのやり方を踏襲していると言えると思います。実際に、元カーネーション矢部浩志など実績のあるメンバーもいますので、可能な所作では元々ある訳です。

その上で鈴木慶一は偉いなと思うのは、こうした現代との接触点を持ち続けているところだと思うんです。そのまま個人的世界を突き詰めていく方が楽だし、実際可能だと思うんですが、あえてこうした世代・性別・ジャンルを超えたセッションを求めていく。その積極性とパワーには感服します。思えばライダーズもそうして始まったのかもしれない。そしてそこでの鈴木慶一の存在感は他メンバーの楽曲と共に同時に立ち上がってくる。決してワンマンではなく、しかも自らの存在は他メンバーとの相対的な位置関係で浮き上がらせていくという手法を用いています。今回もそれがこのバンドを魅力的なものにしているんだと思うんです。