ムーンライダーズ『MOONRIDERS LIVE 9212』

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スペースシャワーのアーカイヴによる92年ライブのDVDです。中古屋で一気にライダーズ関連が出品された際にDVDも結構出ていて、その中のひとつにこれがありました。

時期的には『AOR』の頃ですが、皆若い!もう20年前ですからね。当たり前なんですが、肌艶もよくって皆元気に演奏しています。でも活動休止直前でも異常に元気だったので、そういう意味では今とあまり変わらないとも言えます。

収録曲は『AOR』や『最後の晩餐』からの曲が中心ですが、ひとつ気付いた点があります。このコンサートでは結構初期の曲も演奏されているんですが、『さよならは夜明けの夢に』『モダン・ラヴァーズ』『独逸兵のように』といった楽曲が『幸せの洪水の前で』『さよならを手に』といった90年代の楽曲と自然に同居していて違和感がないんですね。ニュー・ウェーブ期を挟んでムーンライダーズのメロウな一面がサンドイッチのように同期している。これは『AOR』という作品が一種の原点回帰であったことを物語るのではないでしょうか。

ムーンライダーズの絶頂期はやはり80年代だと思うんですが、こうした落ち着いた側面もまたひとつの活動の軸であって、この頃にはそのリバイバルが生じていた。そうした見方をすると、一見地味な『AOR』という作品もまた別の意味を持って来るような気がしてきます。

ライダーズはこの後しばしの低迷を経て新世紀に入ってから底力を見せる復活を遂げる訳ですが、活動後期の渋みを備えた演奏とはまた違った魅力を感じました。この時点で一度自らを振り返っていたんではないでしょうか。そんな風に感じた映像でした。