高田漣『アンサンブル』

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久々に曲ごとの参加メンバーを見るのが楽しみなアルバムでした。

高田漣の新作はここ最近の一連の活動を象徴するゲスト満載の素敵な作品に仕上がっています。声が低いこともあって、感触としては『HOSONO HOUSE』のような雰囲気かと思って聴き進めていました。前半は確かにそんな感じなんですが、中盤から少し変わってきます。岸田繁も参加した『野バラ』やpupaに提供した曲の再演『Glass』などで見受けられるロック的なアプローチ。ここに真髄があるように思います。『Glass』では高橋幸宏をはじめpupa関連のメンバーがこぞって参加していて、その演奏のダイナミズムは爽快です。

『Heavenly Music』発表以降、細野晴臣がライブでロック色を強めつつある、という話がありますが、ぐるっと一回りしてまたフォーク、カントリーからロックへ、という流れが予見されつつある。そのひとつのヒントが今回の高田漣のアルバムには垣間見えている感があります。

坂本龍一もピアノで参加した『火吹竹』をはじめとして、お父さんの高田渡やお祖父さんの高田豊の詩に歌をつけている曲がいくつか入っていますが、このあたりも感慨深い。高田漣はある意味サラブレッドではありますが、こうした先人の遺伝子をきっちりと引き継いで次にバトンを渡していくような世代的、時間的な大きな流れを感じさせるアプローチは素晴らしいと思います。

細野晴臣も再三言っている通り、自分の名を残すのではなく先人の行った偉大な仕事にちょっとだけ自分のアレンジを加えて、それをまた次の世代に渡していく。人間の生き方というのは本来そういうものだ。といった時間の大きな流れが実は我々ひとりひとりの役割なんじゃないか、そんなことを高田漣は地で行っている感じがしました。

現代版の『HOSONO HOUSE』には留まらず、更に先を見据えた空気を宿しながら時間の流れも感じさせるというコンパクトかつ同時にスケールの大きい作品に仕上がっている粋なアルバムです。