ア・トライブ・コールド・クエスト『Beats , Rhymes And Life』

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スチャダラパーの源流がデ・ラ・ソウルとクエストだとするとファニーサイドがデ・ラ・ソウル、シリアスサイドがクエストだと勝手に解釈していました。ここ最近何故かクエストの3rdを聴いていたのでふと思い立ってこの4thも手にしましたが、これは当時問題作とされたようです。理由は聴いてみて何となく分かりました。

ビートが少し強過ぎます。クエストと言えばジャズのサンプリングで渋いバックトラックを作るイメージがどうしても強いんですが、ラストアルバムの『The Love Movement』がかなりきつめなビートだったような記憶があるので、そこへの橋渡しのような意味合いを持つものと思われます。

R&Bシンガーの客演も当時物議を醸したようですが、いずれも大騒ぎするような事象ではない。単に96年発売当時の音の変わり方に周囲が驚いたというようなことだと思いますが、基本言葉が分からないでラップを聴く場合、どうしても興味はバックトラックに行ってしまうので、この変化は自分にとっては多少痛いかもしれません。それでも『The Love Movement』にはテイ・トウワのサンプリングなんかもあって楽しめるんですが、本作ではそこまで突き詰められてはいない印象を受けます。

何となくクエスト節みたいなパターンがあって、渋いトラックにワンフレーズ遅れて入ってくるスネア音みたいな定型がここでは崩されている。かつ思い切りデジタルな音。旧来のファンが苦言を呈するのも分からないではありません。但し先頭者は常に変わり続けるもの。ここで変化したのも宿命のようなものなんでしょう。

問題はその後も聴き続けられるかどうか。ここは微妙かもしれません。メロウさが必要なんじゃないかなあ。ラストアルバムはレンタルで聴いて以来なのでちょっと聴き直しが必要ですが、第一印象はやっぱり違うような気がしますね。ヒップホップの時代による変遷に余り興味がないので、このアルバムの重要性は語る術もありませんが、2ndのストイックな存在感がすべてを覆っていることがクエストの不運なところかもしれません。

とはいえクエストの場合、後から効いてくるところもあるので、寝かすとまた違うのかもしれない。その位のクオリティは軽く持ち合わせているように感じます。