ポール・マッカートニー&ウィングス『Venus and Mars』

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年末の大掃除で整理しておいた不要なCDをまとめて売りにいきました。その中に『Ram』の紙ジャケもあったんですが、これが予想外の値段かついたため、まあまあの金額が手に入りました。大分迷った末に敬意を表してウィングスの再発盤デラックスエディションを購入しました。

1stから5年経ってこの勢い。『バンド・オン・ザ・ラン』の次ということでウィングス絶頂期の演奏が収められていますし、アルバムとしてのトータリティも流石に聴き応えのあるものです。ポップミュージックの枠内ではあれ、こういった流れはファンも安心するものだと思います。

来日時の番組で当時のライブを目にしましたがバンドも頑張っていました。今の余裕綽々もいいですが、やっぱり脂の乗った当時の演奏は目を惹くものがあります。とはいえどこまでのめり込めるかというとそれはまた別問題。大衆受けすることが悪いこととは思いませんが、何となく食傷気味になってしまうのは何故なんでしょう。アリスタ移籍後のキンクスが大味だったように、ここにもポールの陽の当たるところに出て行った末の背景の欠落を感じます。悪くはないんですがどこか違う。そこはうまく説明できません。陰影がもたらす奥行きというか、徹底的に明るいことへの無意識の反発というか。ポールはテクニシャンなのでそこまで行ってないとは思いますが、微妙な違和感が賞味期限を短くしてしまう。

それでも良く出来たアルバムですし、聴いていて安心するのは捨て難い。精神安定剤のようなものですし、メジャーであることは共通言語としてコミュニケーションに活用できる。闇は疲れますからね。