小沢健二『戦場のボーイズ・ライフ』

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95年にシングルのみで発売されたこの作品もミッシングリンクでした。『Life』の頃の絶頂期のキラキラした感じが全面に出ていて美しい。当時、アルバムに収録されないことが想像できなかったので手を出さずにいましたが、その後シングルのみのリリースがこんなに頻発するとは思いもしませんでした。

アッパーな躁状態がそんなに続くはずもなく、この後小沢健二は反転してまるで鬱状態になったかのような内省的な作風に変化していきますが、これはその前の最後の花火が上がっている状態。勢いもあるし全能感溢れる自信全開のメッセージが世の中に提示されています。95年は阪神大震災地下鉄サリン事件が起こった年ですので、時代的にもポストモダンに変わっていく節目の年。ここから社会も変わっていきます。

ここに提示されている圧倒的なオプティミズムは永遠に続くことのない幼児性と楽天的な世界。どこかに終りが来ることに皆気付いていたし期待もしていた。それが現実化するとリアルに苦しくなって来て、それこそ長い時間をかけて刹那的な態度への反省と先々への不安が精神を蝕み、それでも生きていくことを柔らかに決意して淡々と自然体で頑張る日々が訪れる。そうなった今、当時を振り返ると、単純に勢いと明るさに懐かしさを覚える。そんな感じかな。