大滝詠一『NIAGARA CONCERT '83』disc 1 NIAGARA CONCERT '83 LIVE JAM 1983/7/24 西武ライオンズ球場

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大滝詠一のライブ盤が出るなんて思いもしませんでした。最近は思いもしないことが続きます。しかも映像付きとは・・。

 

メインはこの83年のオールナイトニッポン スーパーフェス'83というもので、ラッツ&スターサザンオールスターズ、そして大滝詠一という豪華ラインアップでのフェスティバルでの演奏です。初っ端からインスト5曲をオーケストラでかますという大技に出ていて、全てが大滝ファンではない状況の中で観客が引いていく様が何となく伝わってきます。これを押し切るのが大滝詠一。その他にも映像撮影を一切禁止したり、スクリーンに歌詞を出させたりと、前例のない要求を実現させています。

 

ライブ自体がお嫌いだったようですので、それを説得して出演してもらった結果、ご本人の徹底した完成度にこだわらざるを得ない展開になっていく。そして残った記録はこうして長い時が経っても色褪せずに世の中へ出すことができる。周囲は大変だったでしょうが、それが時を超える所作なんですね。

 

演奏は本当に夢のようで、後半の「雨のウェンズデイ」あたりからは感動の連続となります。「探偵物語」のセルフカバーや「冬のリヴィエラ」の英語バージョンなど、大滝詠一としてのファンサービスも大いになされつつ、「君は天然色」で終わる。それにしても歌がうまい。そしてライブには確かに向かないかもしれない、室内楽のような丁寧で繊細なボーカル。

 

中期以降のビートルズXTCのアンディ・パートリッジのように、ライブ自体に重きを置かない活動を主軸にしている人がいざ人前に出ると完璧主義を体現するステージを作り上げる。そして自らの世界観を絶対に壊さない。この品格のある表現は、まるでクラッシックのようです。教会のミサのようだ。そして美しいと思います。