はっぴいえんど『WITH はっぴいえんど 〜バッキング音源集〜 (VERY BEST OF PRODUCTION WORKS)』

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最後はバッキング・ミュージシャンとしてはっぴいえんどのメンバーが参加した音源を集めたディスクです。これも、はっぴいえんどというバンドを立体的に捉える良い参考資料となっています。

 

ここで考えたことはたった一つ。「大滝詠一はフロントマンである」ということです。冒頭に遠藤賢司の音源が収録されていますが、ここでは大滝詠一を除く3名が演奏に参加しています。大滝詠一は最初はスタジオにいましたが、自分の役割はそこにはないと感じて途中で帰ってしまったといわれています。ここがポイント。

 

細野晴臣はっぴいえんど解散後にスタジオ・ミュージシャンとしての集団、キャラメル・ママを立ち上げたのに象徴的なように、プレーヤーとしての自覚が強い、というより元々ベース・プレーヤーとして超一級なので、そうした活動にも自然に移行できるし、フロントに立つことも左程志向していない。鈴木茂もギター・プレーヤーだし、松本隆もこの頃はまだドラマーの顔も持っていた。

 

この3人プラスフロントに立つボーカリストがいればバンドは成立する。逆に言えばフロントは代替可能な訳です。あくまでフォーマットとしての話ですが。それは遠藤賢司であっても岡林信康であっても高田渡であってもいい。勿論作家性とバンドのアイデンティティの問題があるので、はっぴいえんどとしては大滝詠一は不可欠ですが、演奏家として考えると、そこには交換可能性が立ち上がってくる。だからこのディスクには大滝詠一のソロ作品も収められている訳です。

 

このボックスを初めて聴いた時に一番耳を捉えたのは金延幸子の「時にまかせて」という曲でした。物凄く洒落ていてカッコいい曲です。すぐに『み空』を買いに走ったような記憶があります。

 

はっぴいえんどの聴き直しはこれで終了。今回改めて聴いてみてやはり沢山の発見がありました。聴く側が変われば感じるものも変わってくるんですね。語るのではなくまずは聴くことが大事です。