松本隆『風街であひませう』

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40代も後半になると仕事の仕方が変わってきます。長くやっていれば自然と知り合いも増えますし、かつての経験がお互いに知織化されているので、大体仕事を頼む時におおよそのイメージが湧く。

はっぴいえんどのかつてのメンバーに仕事を頼むことで、バンドで変えようとしていた音楽の業界を裏方から変えていく形をとっていたのが80年代の松本隆の仕事なんだと思います。表面的には見えてこないものの、脈々と息づく70年代初頭からの想い。そして、端的に仕事の仕方として旧知のメンバーに間接的にメッセージを送るかのような共同作業。これは歳をとって実感できました。

松本隆の作詞活動45周年トリビュートの目玉は何といっても細野晴臣はっぴいえんど時代の未発表曲「驟雨の街」。ずっと聴きたかったんですが、やっとまともに聴けました。小品ですが非常に奥行きが深くていい作品です。細野晴臣大滝詠一にもメッセージを送っていましたので、もしかしたら、また別の形ではっぴいえんどの再結成が行われていたかもしれない。しかしそれは叶わぬこととなりました。とはいえ他の3人はこうして集まった。まるでジョン・レノンが亡くなった後にジョージ・ハリスンのソロで他の3人のメンバーが集まった時のようですね。

音楽の方は他にも聴きどころは満載ですが、全体的にコーディネートしている鈴木正人の手腕が大いに発揮されているように思います。とても説得力のあるトラックが多い。詩の朗読の方は聴き込めば面白いんでしょうけれども、やはり音楽は音楽なので、歌詞は歌ってなんぼのように思います。従って深入りはしないことにします。