はっぴいえんど『はっぴいえんど ライヴ・ヒストリー 〜レアリティーズ〜 Vol.1 (ULTIMATE LIVE HISTORY VOL.1 1970-1971)』

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ここからは発掘音源となります。まだヴァレンタイン・ブルーと紹介されている頃の70年4月の演奏から始まりますが、この時点でまだ1stもリリースされていない。ごく最初期の録音からスタートして、全日本フォーク・ジャンボリーの音源へと繋がっていきます。

 

2つのことを感じました。まずはライブ音源ということで当然と言えば当然ですが、「作家性」「精神性」よりも「肉体性」が前面に出ている、ということ。とにかく細野晴臣のベースがうねっていてカッコいいし、鈴木茂のギターも唸り声を上げています。松本隆のドラムも肉感的で素晴らしい。

 

細野晴臣の楽曲「しんしんしん」を大滝詠一が歌うバージョンが収録されていますが、やはりこれだけ細野晴臣がベースをブンブン弾いていると、これを演奏しながら歌うことは難しいだろうな、と思います。でもそれによって大滝詠一の脂の乗ったボーカルと相まって非常に逞しい演奏となっています。これは聴きもの。

 

2点目は遠藤賢司のカバー曲にあります。「雨あがりのビル街」をカバーしているんですが、はっぴいえんどの日本語詞のヒントになったのは遠藤賢司の歌だった、という話もあるので、ここでのカバーは必然。初期の遠藤賢司のアルバムにははっぴいえんども演奏で参加しています。ここが聴き手にとって、いきなり出てきた謎の日本語バンドを位置付けるためのヒントになっている。

 

演奏している場は全日本フォーク・ジャンボリーですので、やはりフォークの領域のイベントです。ここで遠藤賢司のカバーや岡林信康のバックで演奏することによって、はっぴいえんどというグループがどんなことを志向しているのか、聴く側に理解させるきっかけを作ってあげているのではないかと推測します。

 

「そうか、ボブ・ディランが電気化したことを考えると、はっぴいえんどザ・バンドのようなものか」という理解であったり、日本語の歌詞の背後に聴こえる、というよりもグイグイと前に出てくる演奏からバッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプの音を感じとったり、と色々な思いが閃いてくるのではないでしょうか。果たしてそこまでのリテラシーが聴衆側に当時あったのかどうかは不明ですが。

 

いずれにせよ、演奏が非常にいいので、ライブ音源とスタジオ音源をセットで聴いて初めてバンドの全貌が明らかになる、という基本的なことを確認できる貴重な音源集です。